人ならざる者
緑の戦いは日々続いていた。
その間に、緑にとって吉報がもたらされていた。
それは、緑の母親と姉が避難所で無事にしているというものであった。
避難所の管理をしていたレミによって発見され、すぐに緑へと伝えたのだった。
「そうですか。よかった。あとは父さんと紫野――。」
緑の父と弟は未だに行方知れずのままであったが、とりあえず母と姉の無事が確認され緑は、ほっと胸を撫で下ろしたのであった。
一方、エリオットのアジトでかくまわれていた戒と母親、そして凛香にも変化があった。
このアジトではいつ何があるか分からないからと、戒と家族を避難所へ移動させることを決めたエリオットだったが、戒と凛香は緑の側に居ようとした。
だが、まだ体調が万全ではない母親は避難所に行かせた方がいいという判断で、戒は緑と一緒にここに残るつもりだった。
だが、いつもは大人しい凛香が、ここは一歩も譲ろうとしなかった。
「――わかったよ。緑のこと頼んだぞ、凛香。」
「うん。お兄ちゃんこそお母さんのこと頼んだよ。」
こうして凛香は緑の側に残ることを選択したのだった。
その最たる理由としては、緑の精神的な面であった。
戦いに身を置く、緑が時折見せる表情や仕草に危うさを感じとったからに他ならない。
精神面ならば自分でも少しは彼の力になれるかもしれないと感じた凛香は、緑の側に残ることを強く心に誓っていたのだった。
「ねえ、緑君。お母さんやお姉さんに会いに行かないの?」
「うん。無事だと分かっただけで今は充分だよ。エリオットさんの避難所にいればとりあえずは安全だろうし。」
避難所を用意したのはエリオットだ。
彼の特別な力で避難所には、結界のようなものが張り巡らされている。
それを何十、何百という場所でそれを行っているのだから驚かされる。
しかし、それでも第三波と呼ばれる終末の声が鳴り響けば、避難所さえも安全とはいえないと、エリオットは言っていた。
どちらにせよ、時間がないのは変わらないと、緑は焦っていた。
それでも緑に出来ることは限られている。
今は一人でも多くの異変者を正常化させていくことが何より大事なことだった。
「じゃあ行ってきます。」
そんな緑を凛香は、ただ見送ることしかできなかった。
「ちょっと待つんだ緑君。」
その緑を呼び止めたのは、エリオットだった。
「実は妙な情報が入ってきたんだ。」
そう言ってエリオットはレミへとバトンタッチした。
「妙な情報?何ですそれ?」
「これは、避難所にいる人から聞いた話しなんだけどさ、どうも最近街中に異変者とは別の変な輩がうろついているって話しなんだ。」
レミも、その情報がどこまで真実味があるのか疑っているような雰囲気に見えた。
「なんだよ、その雑な情報はよ。」
バーンもその不確か過ぎる話しに、すぐに噛みついた。
「うーん……何て言えばいいのかな。つまり人間とは違う生き物が他にいるってことなんじゃないかな。」




