真の敵
謎の声に支配されるように白は、頭を抱え苦しみ始めた。
血管が異常に盛り上がり、目は真っ赤に充血していく。
その様子をエリオットは冷静に見つめていた。
そして、緑へと一言こう言った。
「緑君、頼めるか。」
緑も、すぐにエリオットの真意に気づき、大きく頷いた。
「おじさん、大丈夫だから。」
緑は集中した眼差しで白を見た。
「いくよ!」
この頃には、緑は完全に直毘刀の扱いを出来るようになっていた。
なぜかは不明だが、日に日に自分の体に馴染んでいくような感覚だった。
そして、右手から緑のオーラを放ちながら、それは現れた。
その刃で躊躇うことなく、緑は白を貫いた。
白は、まだ完全に異変者へと変貌を遂げてはいなかった。
その状態で緑の直毘刀で貫かれたのだが、特に問題はなかった。
すぐに症状は鎮静し、元の普通の人へと戻った。
異変者となって暴れ回った訳ではないので外傷もない。
意識もはっきりとしていた。
「……こ、こんな馬鹿なことが……。」
白が呟いた理由は大きく二つであった。
一つは銀の世代の生き残りである自分が、この期に及んで異変者になるとは予想だにしていなかった、ということ。
そして、もう一つは一度異変者に堕ちた者が再び元に戻るという奇跡。
その二つが研究者である白の脳を刺激したのは間違いないだろう。
「緑君、君はいったい?」
「俺にもよく分からないんです。ただ、父さんが俺に託した物だということ以外は。」
「そうか……尊さんが。」
緑自身、自分の力の操作には慣れてきた節があるのは事実だ。
だが、根本的にこの刀の力の正体を知ることは出来ていなかった。
「白博士。この緑君の力があれば、もしかしたら奴を引っ張り出すことが出来るかもしれません。だから、貴方は一旦ロボット兵を全て引き上げてもらえないでしょうか。」
「……そうだな。一度異変者となった者が、復活を果たせば、さすがに奴も平常心ではいられないかもしれん。もし、奴が我々の元に姿を見せたのなら、私のロボット兵で木っ端微塵にしてくれる。」
白は、どこか冒険にでも出かける少年のように、興奮を隠せない様子だった。
「もちろん、奴を倒せるのかという不安はありますが、私もこの時の為に力を温存してきました。共に戦いましょう。」
エリオットと白は固い握手を交わした。
しかし緑だけは不満だった。
自分だけ弾かれているような気持ちだったからだ。
そもそも、この流れからすると緑が存在していることが何より大事な事だ。
二人の握手を眺めながら、緑は思い出したように二人に訊ねた。
「あの、そろそろ教えて下さい。俺たちは何と戦えばいいんですか?」
エリオットと白は再び顔を見合せ、そして同時にこう答えた。
「――神だ。」と。




