追撃
エリオットと白の間には直接的ではないものの、深い因縁があったことに緑は驚愕した。
自分が生まれる、ずっとずっと昔の話しが、今こうして現在に至るまで渦巻いている事実に恐怖すら感じざるをえなかった。
「エリオットさん、私はね君に恨みを持っているわけではないのだよ。ただ、私は今の世に生きる人々を助ける義務があると考えているし、そうしたいと思っている。ただそれだけだ。」
「白博士の気持ちは痛いほど分かります。だけど貴方のやっていることは人々を助けるのではなく、異変を起こした者たちをただ排除しているに過ぎない。そんなことをしても意味がないことを貴方は理解しているはずでしょう。」
白は少し苦い顔をして少しの間、沈黙した。
「……私がやるべきことは確かに異変者を駆除することではない。真の目的は奴を抹殺することだ。だが奴の居所はどうしても掴めない。だから私は約百体のロボット兵を外へと放ち、奴の出方を待っているんだ。」
「なるほど。私の標的も奴です。同じ志を持つ者として、一つ提案をしたい。」
緑は一人、話しについていけずに、ただ二人のやり取りを黙って聞くことしかできなかった。
「なんだね?」
「この緑君には特別な力が宿っています。彼ならもしかしたら、奴を引きずり出すことが出来るかもしれない。」
「緑君に?いったいどんな力があるというんだね?」
エリオットと白は二人で緑を見つめた。
「ち、ちょっと待って下さい。その前に、その『奴』のことを聞かせて下さい。」
緑は堪らず奴の正体について訊ねた。
何も知らない緑でも、その『奴』こそが、この現状を作りだした張本人であることは明確だったからだ。
「そうか君はまだ何も聞かされていないのか。」
そう言って白はエリオットの顔色を伺った。
エリオットは無言で頷き、それに応えた。
「分かった。私から話そう。奴とはつまり――。」
その時だった。
頭の中に何かが語りかけてきた。
脳内で鐘が鳴るような響きが始まり、そしてそれは確かな声となって脳を支配していった。
「こ、これは!?」
「ついに来たか!だが大丈夫だ。私や博士には通用しない。緑君、自我を保て!君なら出来るはずだ。」
エリオットの言っている意味など理解は出来なかったが、この現象は最初に戒がおかしくなってしまった時と同じだった。
緑は深く息を吸い込み、目を閉じた。
その声に支配されないように努めたのだ。
「――あえ。殺し合え、我が創りし者共よ。最後の生き残った者一人だけを我は認めよう。」
その声は以前の時よりもはっきりと脳へと響いた。
しかし緑はその声を、脳内から遮断することに成功していた。
もはやどんな言葉であろうと問題はない。
隣にいるエリオットを見てみると、彼もその声に動じることはなく、涼しい顔をしていた。
だが白は違った。
戒が、あの時異変者になった時と同様、苦しんでいるように見えた。
「白博士!しっかり!」
白にはエリオットの声も届いていない様子だった。
「な、何故――私が……そんな馬鹿なことが……。」




