遭遇
緑たちは異変者たちの目を警戒しながら、凛香の自宅までやって来た。
今にも雨が落ちてくるような、厚い灰色の雲が空一面を覆っていた。
ピンポーン!
「お、お前馬鹿か!?」
バーンは緑の頭を叩いて言った。
「いやだって誰かいるかもしれないし。いくら仲が良いっていっても勝手に家に入るのはまずいかなって……。」
「いやぁ、緑っちは純朴でいいね。だけどね今は普通の状況ではないのだよ。だからインターホンなんて鳴らして異変者たちが集まってきたら大変なことになってしまう。分かるよね。」
レミは子供を躾ているような素振りで優しく語りかけた。
同じ歳ではあるが緑は純粋な瞳でレミの言い分を聞いていた。
その時だった。
突如、家の中からガシャン!と何かが割れる音がした。
三人は顔を合わせ意を決して突入を試みた。
玄関に鍵は掛かっていない。
すんなりと家の中に入った三人はそーっと奥へと進んだ。
何やらガタガタと音が鳴る方を探りながら行くと、そこはリビングだった。
奥にキッチンがあり、どうやらそこに何かがいるようだ。
扉の陰から覗くと、そこには変わり果てた姿の凛香の母親がいた。
「やっぱり、まだここに居たんだ。すぐに助けてあげるからね、おばさん。」
緑は彼女の視界に入るように姿を見せた。
「ち、ちょっと緑っち!」
「まあ、待てよレミ。ここは緑に任せてみようぜ。」
緑に気付いた凛香の母はすぐに緑を襲う、ということをしなかった。
ただ不思議そうに緑を眺めているような、そんな感じだった。
「どうなってんの?」
「緑には特別な力があるらしい。そうパパが言ってたんだ。だが、もしも緑ではどうしようもなかったら、その時は俺たちの出番だぞ、レミ。」
バーンとレミは懐に手を突っ込み、いつでも彼女をしとめる態勢をとった。
「……おばさん。大丈夫だよ。凛香ちゃんも無事だから、大人しくしておいてね。」
緑は目を閉じ大きく息を吸い込んだ。
すると、緑の手に一瞬にして緑のオーラを纏った刀が現れた。
「おおっ!なんだあれ!?」
「あれがパパの言っていた異変者を正常に戻す刀、直毘刀!」
緑は己の力を上手く使いこなせていた。
何故だか分からないが、彼には大きな自信があった。
それは対象が凛香の母親だからなのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
ただ刀を取り込んだあの時から、徐々に自分の体に馴染んでいき、少しずつ体の一部のようになってきていることを実感していた。
そして今、目の前で苦しんでいる、凛香の母親を元に戻し、凛香の元に彼女を送り届けるという使命感を抱き、緑は刀を振った。
「さあ行こう、おばさん。」




