街へ
緑とバーン、それからレミは街中に出ていた。
街中から鼻を塞ぎたくなるような異臭が漂っている。
こんな惨状でも、バーンとレミは平然と歩いていく。
その後ろを吐き気を抱えたまま緑はついていった。
三人が街に出たのには理由があった。
目的は緑の力を試すためだ。
彼の力を使って、まずは緑や凛香の家族、友人を正常化させようという狙いだ。
それが上手くいけば、緑の能力がもしかしたら飛躍的に向上し、他人にも使えるようになるかもしれない。
そう提案したのはエリオットだった。
この賭けにも思える無謀な提案を緑はすぐに了承した。
緑の中に何かしらの使命感が芽生えていたらに他ならない。
そして、この災いの真相を知り、それを断ちたいと緑は本気で思っていた。
「さて、じゃあまずはどこに行こうか?」
緑の頭の中には、どうしても忘れられない衝撃の光景が焼き付いていた。
それは凛香の家で見た彼女の母親の姿だった。
普段から上品で美しく、緑たちにも優しく接してくれていた凛香の母親のあまりに酷い変貌が頭から離れなかった。
彼女はまだ家の付近にいるかもしれない。
そんな思いから緑は最初の目的地を凛香の自宅に選んだ。
「ねえねえ、緑っち。リンリンって第二世代の血が流れているんだよね?」
確かにエリオットはそう言っていたが、正直なところ緑にはまったく理解できていなかった。
「そうみたいですね。」
「ってことはもしかしたらリンリンの両親のどちらかが本物の銀の世代の生き残りって可能性もあるわけだ。」
レミはなぜか嬉しそうに話した。
「悪いな、こいつ歴史の真実ってやつを追い求めているらしくてさ、いわゆる歴史オタクなわけ。なっ、きもいだろ。」
「うるさいよ、バーン。あんたにきもいとか言われたくないし。あんたの場合、もう見た目から気持ち悪いんだから、あんまりそんなこと外で言わないほうがいいよ。」
緑は二人のやり取りを見て笑みを浮かべた。
こんなにも自然に笑えたのは、こんなことになってから初めてだった。
「おっ、なに笑ってんの緑っち。こんな死体だらけのところでニヤついているところを見ると、お前サイコパスだな。」
「ち、違いますよ。なんか二人の話し聞いてたら兄弟っていいなって。」
緑は自分で言ったことに急に恥ずかしさを覚えた。
「あれ?そういえば緑にも弟がいるじゃなかったっけ?」
「ええ、普段はあまり仲が良くなかったんですけどね。今は心配で仕方ないですよ。」
「そうか、まだ連絡がついていなかったんだっけか。無事だといいな。」
「――はい。」




