緑の提案
「それで政府の動きはどうだ、クロス。」
「軍がすぐに動き出して、掃討作戦を展開しようとしていたんですが、軍の中にも多数の異変者が出てしまったみたいで、今は軍人同士が戦っていて動くことはできないようです。」
エリオットの息子クロスは政府の動きを探っていたようだった。
緑は自分より年下のクロスが、そんなことをしていることに深く感心した。
そしてそれよりも気になったことがあった。
「もしかして政府は異変者になった人たちを殺すつもりなんですしょう?」
「おそらくはそのつもりだろう。そもそも彼らには、この出来事の真相は絶対に分からないだろうからね。」
「でも相手は普通の人間なんですよ。それを一方的に排除しようなんてあんまりだ。」
緑は怒りがこみ上げてきた。
確かにこのまま放っておくことは出来ないだろう。
だからといって罪もない人々を殺していいことにはならない。
「確かに政府の決断はまちがっている。彼らが異変者たちを一掃して片付くのならばそれでもいいだろう。だが、これで終わりではない。奴等の第二波三波が襲ってくる。そうなってしまっては今は正常な人間もどうなるか分からない。私は耐えきる自信があるが、ここにいる者全て異変者になってもおかしくないのだ。」
エリオットの話に出てくる『奴等』というキーワードが気になって仕方がなかったが、おそらく今質問したところで、流されてしまうだろうと緑は考え、あえて何も聞かなかった。
「これからどうするのパパ。」
「さて、どうしたものかな。」
考えている様子のエリオットに緑は一つ提案をした。
「あの、俺の力は使えませんか。」
緑は戒を正常に戻した。
もしもその力を使えれば、今異変者になっている者たちを戻すことが出来る。
「それは無理だろう。君の力は確かに我々の大きな武器になる可能性を秘めている。だが、君の力を使うにはおそらく、ある条件下のもとでしか発動しないのではないか、と私は考えている。」
「条件?それはなんでしょうか。」
「君の気持ちの問題だ。親しい者にはその激しい心情で君の力が使えるかもしれない。だが、その対象が全くの他人であったならば、どうかな。」
緑にはエリオットの言っている言葉の意味を痛いほどに理解できた。
たぶんエリオットの言ったことは正解だろう。
なによりその力の持ち主である緑が、それはなんとなく分かっていた。
「ただ補足するならば、『今は』だ。」
「エリオットさん……!?」
「私の勝手な判断なのだが、緑君はその力を今は殆ど使いこなしきれていない。だから心情に大きく左右され、身内や友人ならば正常に戻すことが可能だったということ。しかし、その力を自分のものに出来た時、我々は勝利することが出来るかもしれない。」
緑は己が背負った宿命が、とてつもなく大きなものではないだろうかと身を震わせたのであった。




