緑の覚醒①
エリオットは緑と凛香を連れ店の外に出た。
陽は落ち、辺りは薄暗く異様な雰囲気に包まれていた。
そこら中に遺体が転がっているのだから、たまったものではない。
「エ、エリオットさん、どこへ行くんですか?」
緑と凛香は体を寄せ合うようにして周囲を警戒していた。
「……うーん、こっちだな。」
エリオットは特に決まった行き先があるわけではなく、思いつきで歩いている様子だった。
しばらく歩いていき、緑はあることに気づいた。
これまで三人は割りと目立つ様な通りを歩いてきた。
それにも関わらず、異変者との遭遇はない。
辺りをざっと見回しても人の気配は全くなかった。
もしかしたら、何らかの理由で異変者は夜は行動しないのではないのか。
そんな考えが頭を巡った。
「おっと、こっちはまずいか。こちらから行こう。」
緑たちはエリオットの後をただついていくことしかできなかった。
それからおよそ三十分ほと歩き回り、一行は橋のある川辺へと辿り着いていた。
「ここだな。」
エリオットはその橋の下へ行くため土手を下った。
緑と凛香もすぐに後に続いていく。
そして、その橋の下で見た光景を見た緑と凛香は絶句した。
そこに居たのは異変者と化した戒の姿があったのだ。
「お、お兄ちゃん!?」
「――戒。」
どうやら戒は膝から下の両足を失っている様子だった。
その両足はどちらも切断されたような痕跡ではなく、何か獣にでも食いちぎられたような悲惨な傷痕だった。
緑と別れてからいったい何が彼をこんな姿にしてしまったのか、想像もつかなかった。
そんな憐れな姿になった戒だが、それでも緑たちを見つけると上半身だけで這いずり襲って来ようとしている。
「お兄ちゃん、もう、もう止めて。死んじゃうよ。」
凛香の悲痛な叫びにも戒は反応を示さなかった。
「さあ緑君。君の親友がこんな目にあっているぞ。どうする?」
「……どうするっていったって――。」
緑の目には大きな涙が浮かんでいた。
「甘えるな。君は彼を助けたいと思わないのか?いいや、そんなはずはない。きっと心の底から彼を助けたいと思っているはずだ。だったら己の力を信じ、彼を助けたまえ。私は君がその力を持っていると信じている。」
緑は当然、戒を救いたかった。
しかし、そんな力が本当に自分にあるのか分からなかった。
だがエリオットの言う通り、このままにしておけば間違いなく戒の命は消えてしまうだろう。
考えても分からない。
どうしたら良いのかも分からない。
そんな緑の手を突然誰かが掴んだ。
――凛香だ。
「緑君。お兄ちゃんを――助けて。」
その言葉を聞いた緑の心臓が大きく鼓動した。
脈拍が上がり、体が熱くなっていくのを感じた。
その熱が緑の手へと移り、まるで手が燃えているような感覚になった。
右の手の平から突如、眩い光が輝きを放った。
緑色のオーラの様なその炎は次第にある形を形成していった。
「――刀だ。」




