特別な力
緑とバーンはエリオットと凛香が待つ喫茶店エルフへと戻っていた。
結局、緑の家族や凛香の家族を発見することは叶わなかった。
ただ、ここまでで分かっていることもいくつかある。
まず緑の父、尊はあれから行方不明のままだ。
緑の母や弟の紫野、それから姉の紅とは連絡がとれない。
それから凛香の兄で緑の親友の戒は異変者になり、行方知れず。
そして戒や凛香の母親も異変者になっているのを緑は確認している。
父親に関しては連絡がつかないらしい。
緑は戒や母親のことは凛香には何も伝えてはいない。
まだこの件に関して、分からないことだらけだ。
もう少し詳細を掴まないと、ただ凛香を不安に陥れてしまうだけだろうと、緑は考えていた。
「凛香ちゃん。きっと皆無事だよ。」
「……うん、そうだよね。」
凛香は言葉とは裏腹にやはり不安気な顔をしていた。
そんな凛香に対して、とりあえず今はこれ以上安易な言葉をかけるのは控えようと緑は思った。
バーンは先ほど緑の家で起こったことをエリオットに報告してたいるようだった。
「緑君、凛香ちゃん。ちょっとこちらへ来てくれないか。」
エリオットは二人を呼び寄せた。
「君たち二人からは少し特別な力を感じるんだ。それについてなにか心当たりはないかい?」
エリオットからの突然の質問に凛香は少し動揺をみせた。
しかし緑には多少の心当たりがあった。
それは父からもらった直毘家に伝わる刀のことだ。
あの刀がまるで吸い込まれるように緑の体と一体化したような不思議な出来事。
あれから緑は少し自分の中で変化が起きていることに気がついていた。
体の奥から溢れ出てくるような力強さが確かにあった。
そのことをエリオットに話すべきかどうかで迷っていた。
エリオットやバーンを信用していないわけではない。
ただ自分のこの話を真剣に聞いてくれるのかが不安だった。
「まず凛香ちゃん。君には珍しい血が流れているようだ。君の両親のことを少し聞かせてくれないかい。」
どうしてそんなことが分かるのか、緑は不思議な気分で見ていた。
しかしエリオットが嘘を言っているとも全く思わなかった。
どこか変わった空気感が漂っているのは最初から分かっていたからだ。
「私の父は研究者です。何の研究をしているのかはよく分からないけど、確かロボット関係だったと思います。母は普通の専業主婦です。」
凛香は戸惑ったような素振りで話した。
「そうか。おそらくは両親のどちらかが私たちに近い存在なのだろうな。話してくれてありがとう。じゃあ次は緑君。君のことを聞かせてくれ。」
緑は迷いを捨てて全てを正直に話した。
最初は笑われてしまうかもしれないと躊躇したが、今はそんなことは微塵も感じなかった。
それは凛香の話を真剣に向き合って聞いていた、エリオットの態度にあった。
きっと彼はどんなに馬鹿げた話でも真剣に聞いてあげる男だろう。
緑は直感的にそう感じ、洗いざらいを話したのであった。




