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伝説の一族 オイノコス=クロニクル

作者: 風風風虱

「王よ!

なにゆえ、このような無法をなされるのですか!!」


 老臣ガーディグルスは王ティアマリオンを諌めて叫んだ。


 長年つき従ってきたこの老獪な賢者の初めての王に対する反旗とも呼べるものだった。


 だが、孤高にして偉大なる王の中の王であるティアマリオンは動じる事なく、居並ぶ兵士たちに命じるのだった。


「我が忠実なる兵士たちよ子供たちを谷に投げ捨てよ!」


 王の号令一下、兵士たちは掴んでいた子供たちを底も見えない谷底に無情にも投げ入れる。


「おおお、何と言うことを!

あの子供たちの中にはあなた様の御子もおられるのですよ。

王妃様もお嘆きです!」


「案ずるな、我が子アイポリウスならばこの試練に打ち勝ってくれると余は信じておる。

必ずや自力でこの千尋の谷を登ってくる」


「しかし――」


「我がオイノコス族は世界一屈強で鳴らす一族なのだ。故にこのような試練に打ち勝った者だけを育て教育する。軟弱な者に生きる価値はない。それが常に精強であらねばならんオイノコス族の宿命(さだめ)なのだ」


 世界最強として名高いオイノコス族の中でも後世無敵王と称えられたティアマリオンは足元でうずくまるガーディグルスの老いた背中を暫し憐れみの眼で見下ろした。


(この男も老いたのだ)


 過酷な現実に立ち向かうにはこの男は余りに歳を取りすぎたのだ。とティアマリオンは思う。


(だが儂は王だ。一族のために鬼に成らねばならんのだ)


「この話はこれで終わりだ。

これ以上の進言はいかに大賢者として名高いそなたであっても許さん。

わかったな!」


 無敵王は、一言言い捨てるとその場を悠然と立ち去った。兵士たちも粛々と従う。


 後には底も見えぬ深い谷と老いたガーディグルスだけが残った。


「いや、そうじゃないから……」


 一人残されたガーディグルスはうずくまったまま、小声でぶつぶつうわ言のように呟いていた。


「こんな深い谷に落とされたら登ってくる前に死ぬから。

現にここ10年、登ってきてる奴いないし。

いい加減気づけバカ王」







 果して孤高にして偉大なるオイノコス一族は子孫が絶えて伝説の一族となった。


2019/01/27 初稿

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― 新着の感想 ―
[良い点] おお、ファンタジーか、と読み始め、ラストの急展開が面白い♪です。
[一言] 老臣の最後のセリフで吹き出しました。 何事も限度があるって事ですね。 (;´_ゝ`)
[良い点] 読ませていただきました! とてもよかったです。 特にラストの展開が好きです。理想に燃えている王を描いて、急に現実に持っていく展開。この無常観やシュールさ、最高です!
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