襲来 オクトエンペラー!
*鑑定結果
【名称】:オクトエンペラー
【種族】:海魔
【属性】:水
【概要】:帝王の名を持つ海の魔獣。その触手の一薙ぎは岩をも砕き、船は一撃に海底に没す。失われし水の国リヴァイアの守護神:大海魔クラーケンの眷属との伝承が残る危険モンスター
(鑑定結果さんが真面目だ! これは本気でやばい!?)
八本の巨大な脚に、まるで薄ら笑いを浮かべているような人っぽい顔。
見た目からして気持ち悪くて不気味だし、相応の危険な雰囲気を放つ帝王の名を持つモンスター。
「ふしゅるぅ~!」
オクトエンペラーはギョロリ丸い瞳でオウバを舐めるような視線で眺めて、触手動かす。
「い、いやぁ~! あく……や、やぁあ~……!」
触手がオウバの細いウェストを粘液でべとべとに犯し、はっきり出ているJカップに巻き付いた。
小刻みに触手の先が震えてオウバの胸を押したり、潰したり、ぐにゅぐにゅし始める。
オウバは蒼い瞳に涙を浮かべ、顔を真っ赤に染めて身をよじる。
しかしオクトエンペラーの触手はオウバを離さない。
「このエロタコ野郎が! オウバを離せ! 稲妻矢!」
シャギは額に青筋を立てて叫び、得意の稲妻魔法をオクトエンペラーへ向けて放った。
「行くぞ、杏奈!」
「うん!」
俺と杏奈はシャギの稲妻に合わせて、走り出す。
「ぶじゅ!」
シャギの稲妻がオクトエンペラーにぶつかり怯ませた。
「あーんなきーっく!」
俺のバフスキル”火属性強化”の恩恵に預かって膂力がかなり強化されている杏奈の綺麗な回し蹴りが炸裂する。
更にオクトエンペラーの巨体がガクンと傾く。
オウバを蹂躙していた触手が僅かに緩んだ。
「GAA!」
飛び上がった俺は爪を伸ばし、触手へ思いっきり振り落とす。
触手は俺の一撃で、タコのぶつ切りみたいにバラバラになって、ようやくオウバを解放した。
俺は触手の残骸をステップにして更に飛び、粘液でべとべとになったオウバを抱き留め浮石の上へと戻る。
「ひっく、えっぐ、うう……ウィンドくんにもまだ触って貰ってなかったのにぃ~、ひっく……」
体の傷は大したことないようだったが、心は大ダメージを負っている様子だった。
「くそっ! ガロンドの野郎! 気前よく狩りの許可を出したのはこういうことだったか!」
シャギはネコのような尻尾を逆立てて、叫ぶ。
しかし次の瞬間にはもうオクトエンペラーの太い触手が大きな浮石を真っ二つに叩き割っていた。
俺達は割れた浮石の片方へ飛び乗って、難を逃れた。
「フシュルー!!」
オクトエンペラーも自慢の触手を一本切り裂かれたからか明らかにお怒りな様子。
にんまりとしてた口元から鋭利な牙が覗き、魚卵のような目が怪しい輝きを放つ。
「みんな、巻くわよ! 着いてきて!」
「ううっ、えっぐ、ウィンドくぅ~ん……」
「いつまでも泣いてないの! これ以上タコ野郎に酷いことされたいの!?」
「それだけはいやあぁぁぁー!」
シャギは泣きべそをかくオウバの手を握って、海の中へと飛び込む。
(俺達も飛び込まないと!)
しかしどうも水を前にすると、なんとも言えない不快感が湧き越る。
これは俺が炎の精霊故か。
「トカゲ、ここ!」
と、その時杏奈が真剣な顔で自分の胸の谷間を指さした。
「わ、わかった!」
この際恥ずかしいなんて言ってられない。
俺は形態変更し、小さなトカゲへと戻る。
サイ〇人みたいな耐水装備も小さな俺に合わせたサイズに変更されていた。
(すげぇー! さすがはSランク魔法使いお手製の装備だなぁ!)
そんな呑気な俺を杏奈は素早くつかみ上げた。
迷わず胸の谷間に挟むと、矢のような綺麗なフォームで海の中へと飛び込む。
青く透き通るような海底。
もしも状況がバカンスならば、スキューバダイビングでも楽しみたいと思えるほど、海の中は綺麗だった。
泳ぐ魚も色とりどりで見ていて楽しい。
海藻やサンゴに覆われている岩がどことなく人工物に見えるのは気のせいだろうか?
そんな自然と、遺跡ロマンがいっぱい詰まった海中はだんだんと巻き起こる砂煙で濁り、魚たちは危険を察知して逃げ惑う。
「フシュルー! フシュ―!」
オクトエンペラーは邪魔な岩礁を触手で崩しながら後を追って来ていた。
やがて視界へ明らか、人の手で切って積まれた石の壁が見え始めた。
先行するシャギは石壁に開いた大きな穴を指し示し、オウバと共にそこへ飛び込んでゆく。
俺を胸の谷間に挟んだ杏奈は迷わず、シャギに続いて飛び込み、ほの暗い水底を潜行してゆく。
暫く進むと上の方から紅い灯りが差し込んでいるのが見えて来る。
シャギとオウバは一気に加速して、その紅い光を目指して浮上してゆく。
その時後ろから”ドンッ!”と花火のような大きな音が響いた。
「!?」
少し遅れてやってきた水圧は海中の流れを乱し、渦を巻く。
俺を挟んだ杏奈はその流れに巻き込まれ、水の中をぐるぐると回り始める。
海中に二つの光が不気味に輝く。
「ッ!?」
すると、杏奈の脚に吸盤の付いた触手が絡みついていた。
姿を現したオクトエンペラーは盛大に不気味な笑みを浮かべて触手を動かし始める。
「んー! んー!!」
触手が杏奈の身体に絡みつき、締め上げる。
杏奈は顔を真っ赤に染めて、身体をビクンビクン震わせながらも、逃れようともがき続ける。
危ない状態だというのは分かるけど、妙に扇情的なリアクションで俺の小さな心臓がどきどきし始めた。
「んんー! んー! あっ……ごぽり……」
杏奈が大きな泡を吐いて、ガクンを首を落とす。
手足から明らかに力が抜けて、オクトエンペラーの触手が更に杏奈を締め付ける。
(杏奈! しっかりして! 杏奈!!)
俺は必死に杏奈へ向けて伝心を送る。
しかし杏奈は全く答えない。どうやら気絶しているらしい。
「ふしゅるぅ~!」
オクトエンペラーは更に口元を緩ませて盛大な笑みを浮かべる。
触手の先端が水の中でも分かるくらいに滑って、Kカップを覆う耐水装備の間に入り込もうとしていた。
(これ以上好きにやらせるか! この変態タコモンスターが!!)
瞬間、俺の小さな体が真っ赤な輝きを発した。
あふれ出た真っ赤な輝きは暗い水中を紅蓮に照らし出す。
そして同時に水がボコボコと泡立ち始める。
「ふ、ふじゅ~!」
オクトエンペラーは慌てた様子で触手を杏奈から外した。
暗色だった触手が鮮やかな”赤”へと変わる。その色彩は素早く伝播して、巨大なオクトエンペラーの身体をあっという間に真っ赤に染め上げる。
それでも俺の真っ赤に燃える怒りの炎は、激しい熱を発するのを止めない。
水の泡立ちが最高に達し、周囲には溶け込んでいた塩分の結晶が雪のように舞う。
杏奈はたぶん”炎の巫女”だかきちんと熱耐性であるわけで全く影響を受けない。
逆に巨大なタコさんは沸騰する水の中で悶え苦しみ、ここから脱出しようと壁に自分で開けた大穴へ泳いでゆく。
(逃がすか、ファイヤーボール!)
俺は上へ向かって巨大な火球を吐き出す。
水の中でも火球の炎の勢いは全く衰えず、水面を飛び出す。
”ドンッ!”という炸裂音と、真っ赤な炎が上に見える。
やがて、砕けた大きな岩の塊が水面へ次々と降り注いだ。
「ふじゅー!!」
瓦礫はオクトエンペラーを巻き込んで水底に沈み、更に壁に開けられた大穴さえも瓦礫で塞いでしまう。
沈んだオクトエンペラーは瓦礫に挟まれ身動きが取れず、ただ熱湯の中で触手をわななかせるだけった。
俺は杏奈の胸の谷間からペタペタと這い出て、ちょっと怖いけど水の中へ飛び出る。
形態変更でリザードマンへ戻り、気絶した杏奈を小脇へ抱えた。
「そこで美味しいタコの塩ゆでになっていろ! あとで残さず、美味しくみんなで食べてやるからな! GAA!」
サ〇ヤ人風耐水装備のお陰で俺は水をものともせず、杏奈を抱えて水面から飛び出した。
「「二人とも無事だったのね!?」」
水から飛び出すと、石室にしたアイス姉妹が安堵の声を反響させる。
「って、杏奈気を失ってるじゃない!?」
「アンちゃん、しっかりして! アンちゃん!」
オウバはぐったりとする杏奈の肩を必死に揺さぶっていた。
水でおぼれた美少女。このシチュエーションなら、もはやアレしかない!
(くそ、やっぱりやるしかない。じんこーこきゅうー!)
「オウバ、そこを開けてくれ! 杏奈を目覚めさせる!」
「は、はい! 分かりました!!」
オウバは跳ねるように場所を開けて、代わりに俺が膝を突く。
杏奈が危険な状況だっていうのは重々承知。
だけどもやっぱり心臓はドキドキするし、否が応でもぷりっと肉厚な杏奈の唇に着目してしまう。
(だ、大丈夫だ! これは杏奈を助けるために必要なこと! 学校の授業でちょっとやっただけだけ上手く行くはず!!)
自分にそう言い聞かせ、いざ!
俺は牙を覗かせ、二股の下をチロリと覗かせながら杏奈へ向かって行く。
「ごほっ!……はっ!?」
と、その時杏奈は水を吐き出して、目を開いた。
「杏奈!」
「いやぁー! トカゲ人間キモイ!」
「がふっ!」
飛んできたのは鋭く鮮やかなあんなパンチだった。
顔面パンチをもろに喰らった俺は、綺麗な弧を描いて吹っ飛び、ばしんと岩壁に大激突した。
「ご、ごめん、トカゲ! びっくりしてつい!!」
杏奈は慌てて俺に駆け寄ってくる。
俺がカクンと頭を落とすのと同時に、海面からは美味しそうにゆであがったオクトエンペラーが浮上してくるのだった




