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よくある問い、一様でない答え

作者: 鏡原レイ

「お父さん、神様はいるのかな?」

「なんでそんなこと聞くの?」

「だって、事故に遭って死んじゃう人もいるし、殺人事件に巻き込まれて死んじゃう人もいるし。悪い事をしていないのに悪いことが降りかかる人がいて、神様は働いてない、というか、いないんじゃないかな。」

「進は神様ってどんなもの、どんな存在だと思っている?」

「神様は人間ではなく、何でも分かっていて、何でもできる、と思う。」

「じゃあ、神様はたくさんいると思う?それとも一神だと思う?」

「いっしん?」

「神は人ではないと言っていたから、神=しんと呼んだのさ」

「僕は神様は一神だと思うよ」

「そうか。人によって信じている神様が違うというのはまだ勉強していないか?」

「してない」

「実は広い世の中を見ると、人によって信じている神様は違う。神様を信じる上での行儀・作法が違ったりもするんだよね。まぁ、ほぼ共通していえるのは、神様は人知を超えた存在、ということかなぁ。ところで、信じている神様が違うことが争いの原因になることは分かる?」

「なんで争いの原因になるの?」

「みんなが自分の信じている神様が正しいと思うからさ。それが原因で言い争いや、ついには戦争にさえなることだってある。」

「戦争をもたらす神様なんていらないね。」

「災厄をもたらすのも、また神様だ、という考えがある。そうやって人間を試しているというのさ。」

「……」

「神様は眠っているわけでもないし、仕事をさぼっているわけでもないんだろうよ。そして、神様は何もしてくれないし、災厄さえももたらす存在だ。でも、神様を信じることで苦しみが和らぎ、心の落ち着きを得ている人もいる。だから神様が必要な人には神様は存在するんだよ。」

「お父さんは神様がいると信じる?」

「何でも望みをかなえてくれる神様は…どうかな。でも、いることは確かめられないけれど、目に見えない大きな何かに向かって頭を下げることや家族、仲間、自分のために祈ることは無駄ではないと思っている。」


「ねえママ。ママは神様がいると信じる?」

「ママは子供の時から神様がいると信じているわ。事故や事件に遭っても、病気になっても神様を恨んだりしない。ママのお友達で、交通事故に遭った人がいて、その人以外は全員亡くなってしまったけど、信じ深いその人だけは生きているわ。」


「兄さんは神様がいると信じる?」

「いないと思う。祈ることもしない。神に祈る時間があるなら、別のことをする。おまえも下らないこと考えていないで早く寝ろよ。ガキのくせに。」


「姉さんは神様がいると信じる?」

「私は、何か困ったことがあると神様に祈っているかも。だから、きっと心の中ではいて欲しいと思っている。」

「祈って何か良いことは起きた?」

「いやー、どうだろう。起きたこともあったかもしれないけど、起きないこともあったかな。」

「結局、どうなの?」

「いると思った方が、何かいい気がする。」


「おばあちゃんは神様がいると信じる?」

「いるといいねぇ」

「いるかな?」

「いるといいねぇ」


「進は神様がいると信じるかい?」

「分からない。でも、いるなら皆が苦しまないように働いて欲しいと思う。」

「神様は働きたくても働けないのかもよ。」

「それはどういうこと?」

「人間は本当は神を求めていない、必要としていないかもしれいないということさ。」

「求めている人はたくさんいるんじゃない。」

「どうだろうね。」

「僕は神様が働いてくれるように頑張るよ。」

「進、まだ分からないかもしれないけど、やるべきことをやるのではなく、やりたいことをやれよ。」

「ママはやるべきことをやって欲しい。人はそれぞれやるべきことを持って生まれてきていると思うの。皆がやりたいことを優先していたらおかしくなるわ。」

「やるべきことなんて分からないでしょ。やりたいことをやってれば、それがやるべきことになる。だから、やるべきではなくやりたいことの方を優先するんだ。」

「何言ってるの?」


……



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