ジャンケン
男は、ある特技を持っている。
特技という次元は超えているかもしれないが、
それは、絶対にジャンケンで負けないということだ。
最初はグー、の時にからかわれてパーを出されてもチョキを出して勝つことができる。
未来が予測できるわけでもないが、ジャンケンに限り、
相手が次に出す手がわかるらしいのだ!
この能力あまり意味がないようだが、
男に言わせると、いろいろ利用法はあるらしい。
どうするのかというと賭けをするのだ。
やり方は簡単。男と一対一の勝負をするだけだ。
男に勝てば1億もらえる。負ければ1000万円払う、
賭けは何回でもできるというルールだ。
お金持ちのギャンブル好きな奴は、この賭けにのってくるらしい。
ある日、男はこの話をある女社長にもちかけた。
彼女は、この話にくらいついてきた。
話を聞くと1億円で10回勝負したいといっているらしい。
10回やれば1回くらいは勝てると思っているのだろう。
そして当日、男はジャンケンをするために、ある場所へ彼女をよんだ。
彼女は、うきうきした表情をしながらやってきた。
もう勝負に勝ったような顔をしている。
男は、
「お金は準備できたようだな。では始めるぞ!」
と言って1億円をテーブルに置いた。
すると彼女は、
「いつでもいいわよ!」
といってテーブルに1000万円を置いた。
お互いのお金を確認して、いよいよゲームスタートだ!
男は、
「かけ声は簡単にジャーンケーンポン! で行くぞ!」
と言った。
彼女は、
「わかったわ! いつでもどうぞ!」
と言った。
それでは1回目 勝負!!
「ジャーンケーン!!」
男は、この瞬間にひらめく!!
(ん? チョキが頭に浮かんだぞ! ということはグーを出せば勝てる!!)
と思った。
「ポン!!」
彼女はチョキ、男はグー、当然男の勝ち。
「あら、負けちゃったわ」
彼女は少し悔しそうだ。
彼女は、「よし、2回目いきましょう!」
と言いながらテーブルにさらに1000万円を置いた。
それでは2回目 勝負!!
「ジャーンケーン!!」
男は、
(ん!またチョキが頭に浮かぶ! ということは、またグーを出せば勝てる!!)
と思った。
「ポン!!」
彼女はチョキ、男はグー、男の勝ち。
「また負けちゃったわ!」
と彼女は悔しそうに言った。
彼女は、「今度は勝つわよ!」
と言いながらテーブルにさらに1000万円を置いた。
それでは3回目 勝負!!
「ジャーンケーン!!」
男は、
(またまたチョキが頭に浮かぶ! ということは、またグーを出せば勝てる!!)
と思った。
「ポン!!」
彼女はチョキ、男はグー、男の勝ち。
「3回くらい連続で負けることは、よくあるから…」
彼女は、ちょっと動揺してきたようだ。
彼女は、「今度こそ!!」
と言いながらテーブルにさらに1000万円を置いた。
それでは4回目 勝負!!
「ジャーンケーン!!」
男は、
(今度はグーか! グーを出す!)
と思った。
「ポン!!」
彼女はグー、男はパー、男の勝ち。
彼女は、
「さすがに強いわね。でも、あと6回もあるのよ」
と言って1000万を置いた。
それでは5回目 勝負!!
「ジャーンケーン!!」
男は、
(今度パーか!)
と思った。
「ポン!!」
彼女はパー、男はチョキ、男の勝ち。
彼女は、
「ここからが本当の勝負よ!!」
と言って1000万を置いた。
それでは6回目 勝負!!
「ジャーンケーン!!」
男は、
(またパー…)
と思った。冷静だ。
「ポン!!」
彼女はパー、男はチョキ、男の勝ち。
彼女は、
「まだまだよ!!」
と言いながら、1000万を置いた…
そして、その後も彼女は負け続け、ついに最後の10回目になった。
もう後が無い…。
彼女は、
(まさか…こんなことになるなんて…でも、ここで冷静にならないと…)
と思った。
そして、
「ちょっと休憩していい? 気晴らしにコンビニへ行きたいんだけど…」
と言った。
男は、まあいいだろうと思い、一時勝負を中止した。
彼女は、
「休憩中に逃げないでね!!」
と男に言った。
彼女にとっては1億円なんて大したお金ではないので、逃げられてもいいのだが…。
男は、
「逃げるわけないだろ。あと1000万手に入るんだからな」
と余裕だ。
彼女はコンビニへ向かった。
そして冷静に考えてみた。
(9回も連続で負けることなど滅多にないはずだけど…あいこが1回もなかったのも怪しい。
それと、ジャンケンの時、何か集中している感じだったわね…何かいい方法は…)
彼女が帰ってきた。
男は逃げずに待っていた。
「それでは最後の勝負いきますか!」
と男が言うと、彼女は、
「あなたは、ものすごくジャンケンが強い。そこで提案なんだけど、次の勝負に10億かけない?」
と言った。
すると、男は、
「ほほーう、10億か…いいだろう」
とニヤッとしながら言った。
彼女は、
「決まりね!」
と言った。
それでは、最後の勝負!!!
「ジャーンケーン!!」
ここで彼女は心の中でパーを出す、と決めた。
勝負が決まるまでパーを出す! と念じ続けた…。
男は、集中した…。
(ん? 最後はパーか。それならチョキを出せば勝ちだな。これで決まりだ!!)
「ポン!!」
男はチョキ、そして彼女は…えっ!!!
グーー!!!!!
何で!! 何でグーなんだ!!
彼女は、まだ念じている。
そして、しばらくして目を開けた…。
彼女は言った。
「私の勝ち…私の勝ちだー!!!」
男は青ざめている。そして心の中で、
(なぜだ!! 確かにこいつはパーを出そうとしていたはずだ!! なぜだ!!)
と思った。
彼女は、
「私の勝ちね。あと、かわいそうだからこの1億で許してあげるね!」
と言ってその場を去っていった。
歩きながら右手を見て、彼女は言った。
「瞬間接着剤ありがとう…」
(おしまい)
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