第二話「勇者とは、変人である」
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Date |××××/0×/××/××:××
From|おっさん神
Re. |勇者についての質問
付 |
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その世界での勇者はドラ◯エとかに出てくる典型的な役割だと思っていいお(^^)
少し違うところは産まれた時から違法コードで改造してあるような状態,つまり流行りの小説のチート持ち状態であるというところだお(°_°)
例えば,百人力の馬鹿力だったり,魔法のエキスパートだったり,戦いの才能に溢れていたりいろんな加護を持っていたりetcetc...
勇者はその世界でもかなり凝り固まった運命の保持者だお( ̄▽ ̄)
ちなみに運命についてはこの前送ったメールのとうりだお(^ー゜)
勇者の場合はたとえ世界の果てまで逃げつづけたとしても必ず魔王と相対することになってるお\(^o^)/
もし勇者が君の近くにいるのなら強くなるように促すことをオススメするお(^ー^)ノ
勇者が魔王に負けたら人類は滅亡すると思っていいからだお(≧∇≦)
勇者はとにかく強力だから近くにいるつもりなら巻き込まれて殺されかねないから気をつけることをオススメするお( ^ω^ )
P.S.
メールは料金かかるからできればメッセージや質問はL◯NEで送ってくださいm(._.)m
それから最近メールの返信が少ないしL○NEも既読無視が多いです。神様は信仰やらなんやらの問題で寂しいと本当に死んじゃうのでたまにはお返事ください(つД`)ノ
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数年前、アリスと初めて出会った頃にスマホを使って送った質問文のその返信である。
おっさん神とは前世で俺が死んだ時にファミレスにいたアレなのだが、このスマホが俺のものになった時に決められた条件としてこいつとメル友になるという、はなはだ遺憾なものだった。
というか、なんでこいつはメールの時はこんなにテンション高いんだろうか。ネット人格ってやつなのか?本当に本人なのか?
まあ、それは置いといて、メールはいつもこんな口調で大量に送られてくるため非常にめんどくさいが、何か気になることがあれば最終手段でこいつに聞いている。むこうも神界法度とかいう神様たちの法律に当たり障りのない範囲で教えてくれたりする。
そのうちの一つ、勇者についてなのだがこれ以上は教えてくれなかった。
どんなチートを持っているかという質問をしたら個人情報系の問題は答えられないという返事が来た。
こんな感じでスマホは一応重宝しているのだが、登録アドレスがこいつ一人なのがなぁ……いや、友達くらいいるし…いる…あれ?いたっけ?
ど、どうせこの世界でスマホなんて持ってんのオレだけだし。
「……にぃにぃ、それ、四角いの、なに?」
「これか、スマホっていう………神様の落し物だ」
閑話休題
今、目の前で薪を人外スピードで残像作りながら割り終えて気持ちよさそうに汗を拭いているのがこの世の勇者様である。
アリス・リテル
なめらかでサラサラとした絹のような長い金髪
高価な宝石のごとく透き通るような翡翠色の目
クリクリとした目つきをした明るくて可愛らしい表情
頭に一本長めのアホ毛
エプロンドレスのようなふんわりとした服が似合う、アリスって感じのアリスな天真爛漫な少女である。
…………と言えば聞こえはいい。
「イオりん‼︎イオりん‼︎」
なんと言えばいいのか、見た目はいいんだが………まあ一言で表すとするとこいつは、
「薪を作るだけじゃ面白くなかったので全部サイコロにしてみたのです‼︎これで遊ぶのです‼︎」
電波なのである。
「このどアホ‼︎誰がそこまでしろって言った‼︎ご丁寧に1センチサイズにまでしやがって‼︎こんなんじゃ薪として使えねぇよ‼︎」
「いたいのです〜、アリスのくせっ毛引っ張らないで欲しいのです〜」
「ちょっと目を離した隙に余計なことしやがって‼︎こんなアホ毛引き抜いてやる‼︎どうせ実はこれアンテナかなんかなんだろ‼︎これで電波受信してるからそんな発想でてくるんだろ‼︎」
「違うのです〜、あんてなとやらじゃないのです〜、これはアリスのチャームポイントなのです〜」
こいつとは長い付き合いだが出会った当初からそのわけのわからん発想と言動備わっていて、それは何年たっても変わらなかった。
「う〜、痛かったのです…あっ!イオりん‼︎みてください!このサイコロなんか千面あるのですよ‼︎」
「もうほとんど玉じゃねーか‼︎いつ使うんだよそれ‼︎」
「え〜と………丁半とかで使えるのです‼︎」
「せめてすごろくでいいだろ‼︎つかなんでお前丁半知ってんだ‼︎」
アリスはきっと不思議の国の住人に違いない。時計ウサギを追いかけてこっちの世界に上ってきてしまったんだと7割がた本気で思っている。
「あっ!それから洗濯も済ませておいたのです‼︎今井戸の中から取り出してくるのです‼︎」」
「おー、そうか洗濯も終わって…………おい待て今なんつった⁉︎『井戸の中』⁉︎お前、うちの井戸になにしやがった⁉︎」
「魔導洗濯機がなかったので代わりにしてみたら意外と使えたのです‼︎よかったですねイオりん‼︎明日から洗濯楽になるのですよ‼︎」
「終わった……明日からしばらく水使えねぇ……」
………正直、不思議の国にお帰り願いたい。
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井戸が使えなくなったのでスコップ持ってきてアリスを使って別の場所に井戸を掘らせた。
ちなみに井戸の作り方はスマホ使ってw◯keで調べた。元あった井戸と繋がらないようにもした。15分くらいで終わったことにもう驚きはしない。
「ふぅ〜、一仕事終えた後の水は格別なのです〜♪」
「…そだね」
まだ朝だというのにすでに体力も気力もつきかけていた。
「さあさあイオりん‼︎遊びは終わりなのです‼︎冒険に出発なのです‼︎」
「オレにとっては、家事は仕事で冒険は遊びなんだよ。お兄さん今日はもう仕事で疲れたんだ、一人で行ってきなさい」
「勇者にとっては冒険が仕事なのです‼︎そして勇者はその数々の死線を仲間とともに助け合い乗り越え、感動を分かち合い、お宝をゲットするのです‼︎」
「その勇者に殺されかけた数々の死線の件について控訴したい」
井戸の近くでぐったりと座り込んでいるオレとは対象的に、アリスはオレの目の前に立ち、さっきから身振り手振りアホ毛振りで元気発剌としゃべりまくっていた。
どうしてこいつは動けば動くほど元気になるんだ?
「記憶にございません‼︎さあ、イオりん‼︎約束どうり無理やりにでも冒険に連れて行くのです‼︎」
「おい待て‼︎なにする気だ⁉︎やめろ‼︎寄るな!触れるな!近ずくな!」
その後、オレは抵抗むなしく勇者の腕力にモノを言わせたアリスにお姫様抱っこで連れ去られた。
それを静かに見送っていたリーアのジト目が痛かった。