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世界は、狂わしいほど騒がしく、そしてーー  作者: やかやか
プロローグ「騒がしくも賑やかで」
4/23

三話目「起床は速やかに、食卓は賑やかに」

書いてて楽しかった回

鐘の音に心を澄まし終えていい1日を迎えることができたところで、次のことに移るとしよう。


ということで今教会の二階のある部屋の前に来ている。

正直、今からやることがが一番面倒な気がする。


早くも憂鬱になりかけながら、気合を入れて年季の入ったドアを勢いよく引き開ける。


「起きろ‼︎シスター‼︎朝だぞ、飯だぞ、さあ早く起きろ‼︎」

「んぅ……………………………………zzzzz」


ここは教会であり孤児院であるため、当たり前だが世話人がいる。

それがこの布団の塊となっている修道女〈アリエル〉なのだが…


「シスター‼︎起きろ‼︎あんた起きないとみんな飯食えないんだってば‼︎ほら早く‼︎ハリー!ハリー!ハリー!」

「んゃぁ……………………………………、あと5年……」


…何回目だろうか、このやりとりは。というか、これはやり取りと呼べるのだろうか?

何時だっただろうか、あんたのあと5分はあてにならない、と言ったら5年と言い出すようになったのは。

この人、異常に朝に弱いのである。


未だに布団にくるまって団子状態になっているシスターを起こすため、とりあえずカーテンと窓を開け、部屋に日の光と風を送り込む。


「ほらシスター、我らが尊き偉大なるサニア様が目覚めのご挨拶にお越しくださりましたよ。ほら、いつまでも布団にくるまっていたらせっかく来てくださったサニア様に失礼ですよ」

「……神託が降りました…健全で模範的な素晴らしきシスターアリエルは、日頃の良き行いを報い今日くらい好きにゴロゴロしていいと…ああ、神のお告げなら仕方ない…イオちゃん、私は神事を全うするためにもう少しだけ……zzzzzz」


せめて言い終わってから寝てくれないかなぁ…


「シスターアリエル、神託が降りました。この素晴らしき朝日を浴びて皆と食事をとらなければ、邪神の魔の手があなたに襲いかかるであろう、とのことです。さあ、厄災が降りかからないうちに早く日を浴びて皆と食事といたしましょう」

「…………シスターアリエル、惑わされてはなりません。あなたは今神事の真最中…あなたは試されているのです…あれは、邪神のモリアの声、あなたを闇に引きずり落とすためにイオちゃんに乗り移ったのです…ああ、なんということでしょうか、神の子イオや、邪神なんかに負けないで、私はあなたを信じています…………zzz」


……ハァ

オレはシスターを正攻法で起こすことを諦めてポケットに入れておいたものを取り出す。

そして、それの設定をして最後の通告を行う。


「シスターアリエル‼︎目覚めるのです‼︎邪神の魔の手が目の前に迫っております。今ならまだ間に合います。私はあなたが目覚めることを信じております。さあ、急いで‼︎目を覚まして、アリエル‼︎」

「………ああ、なんということでしょう。神の子イオが邪神の手に堕ちてしまうとは、彼を救うには神事を全うし、真なる力に目覚める必要があります…神の使いアリエルよ、もはやこの神事はあなただけの神事ではないのです。待っていてくださいね、我が愛しき子イオよ。必ずやあなたを救ってみせます………何年かかっても………zzzzz」


「邪神の一撃」


そう言ってオレは手に持っていた長方形の小さな板のようなものを投げ、耳をふさぐ。


ブオオオオォォォォン‼︎‼︎ブオオオオォォォォン‼︎‼︎ブオオオオォォォォン‼︎‼︎ブオオオオォォォォン‼︎‼︎


途端にけたましい爆音が鼓膜を破壊せんとばかりに鳴り響く。窓を開けてなかったらガラスが割れていたかもしれない。


「ぎゃゃゃゃややああああああっっっっ⁉︎」

さすがのシスターもこの爆音には耐えられなかったらしい。



ちなみにオレが投げつけたのはスマートフォンである。

なぜこの世界でオレがそんなもの持っているのかというと、あのおっさん神から手違いで届いたのだ。

と言ってもオレが生まれた時から持っていたらしいのだが。

いろいろあって、ある条件のもとにオレの手元に残ることになった。


これがただのスマホと思うことなかれ、神の国で作られた当時の最新の逸品である。

重さはほぼ感じないのは当たり前、盗難・紛失防止機能とやらで所有者の元に"勝手に"ついてくる。

置き忘れたと思って振り返るとそこにはスマホがという光景を初めて目にした時は名状しがたい恐怖を感じた…

そしてやたらと頑丈であり防水防塵などの機能はもちろん、奈良の大仏、100人乗ってもダイジョーブ♪という大変失礼なキャッチコピー付きである。

そして壊れても自動で治る…


機能はほぼ制限されて電話とメール、写真くらいしか使い用はないのだが今みたいにアラームも使えることを最近知ってから前よりも重宝するようになった。


元から入っていたアラーム曲『神のラッパ~目覚ましver.~』

死者を迎える神聖なラッパを神様は目覚まし代わりに使っているらしい…知りたくもなかった。


まあ、盛大なる神による曲だ。ある意味本物の神の一撃はシスターを起こすには十分だったようだ。



「もう、イオちゃん、その起こし方はやめてくださいってぇ、このまえお願いしましたよねぇ」

「おはようございます、シスター。朝はもう少しスムーズに起きてくれってお願いしたよな」


この、やけにまったりとスローペースでしゃべるのが我らが母である、シスターだ。

少し低めの背丈に、あまりはっきりとしない身体のライン。

優しいふんわりとした甘栗色の髪の毛を背中まで伸ばし、美しい碧眼の目はいつもニコニコしている。

全体的に穏やかな小動物を思わせるような容姿をしている。

その姿はどこか幼く、あどけなさが残りまだまだ10代でも通りそうなのだがこれで25である。



「もっと、穏やかに起こしてくれても、いいじゃないですかぁ〜。せっかく、こんなにも気持ちのいい朝なんですからぁ〜」

「起こす努力はしたが起きなかったのはあんただぞ、シスター」

「だめですよぉ〜。ちゃんとシスターじゃなくてマザーって呼んでくれないとぉ〜」

「ダメですよ、話をすり替えないでくださいね、シスター」

「マミーでも、ママでも、お母さんでも可能です。さあ、いってみて下さ〜い!」



……ハァ、ダメだな、話が進まない。

こちらがなんと言おうと、自分のペースでしゃべるのがシスターアリエルである。

こうなったら最後何と言っても話が合わせようとしてくれない。


こういうときは強引に切り出すに限る。


「さあシスター、ご飯です。ヤンチャどもが腹をすかして待っていますよ。」


そう言うと俺は身体を逆回転させて部屋から出て行く。


「ああ、待ってください、イオちゃん。まだ私のことお母さんって呼んでくれてまs……」



扉を閉めるとシスターの声は聞こえなくなった。


流石のシスターも神のラッパを聞いた後に二度寝はしない…あ、スマホ部屋に忘れてきた。

廊下の中頃になって気づき振り向くとそこには見覚えのあるスマホが落ちていた。

見慣れてしまって光景に自分がちゃんと正気なのかと疑う時がある。




~~~~~


シスターを起こしたところで食堂に向かうと、起きてきた弟妹たちが食器の準備を始めていた。

こいつらはすぐ問題を起こすくせに食事の時だけは行動が早い。


「あっ、兄さんおはようございます。上からものすごい音が聞こえてきましたが大丈夫でしたか?」


真面目メガネの弟パルゥ君、数少ない気遣いのできる手のかからない優等生である。


「ああ大丈夫、ちょっとシスターが起きなかったからきゅうをすえただけだよ」

「ああ、母さんが原因でしたか。それは仕方ないですね」


そう言うとパルゥはオレの分の食器まで用意してくれた。

たったそれだけの事なのにその親切さに朝からささくれ気味のオレの心は癒されてしまう。


「ありがとう、パルゥ。お前は気遣いのできるいい旦那様になれるぞ」

「……兄さん、そういうことあんまり人の前で言わないでほうがいいですよ、また変なのに捕まりますよ」

「……なあパルゥ、前から思ってたんだけどさ、お前らオレのことなんだと思ってる?」

「……………………………………珍獣?」


…なるほど、確かにオレって高く売れそうだもんね、珍しいもんね、高く売られそうなったんだもんね。





パルゥが心のささくれを引きちぎってくれたところで、食事の準備も終わったようだ。

いつの間にかシスターも身なりを整えて二階から降りてきていた。


食堂の長机ほ挟んで左右に7人ずつ全員腰掛けていた。


「それでは皆さ〜ん、手を組んで、お祈りをしましょう。今日も命の恵みに、生きて行ける喜びに、ーーーー」


シスターの合図に皆が手を組み、感謝を込めて祈りを捧げる。

あのヤンチャ小僧どもが大人しく真剣に祈りを捧げるのは、シスターの教育のたわものである。




孤児院、そこは捨て子が集う場所だ。

この世界で生きていくのは治安もあまり良くないし文明も発達しているとは言い難いため日本よりも厳しい。

だが、実は捨て子というのは日本でも決して少なくはなかったのにもかかわらず、この国にはあまりいなかったりする。


宗教国であるこの国は、国教であるサニア教の教えがかなり根強い。

元日本人としてはその風習になかなか慣れないが、この国に住んでいる人たちはそれを当たり前に思っているし、それがこの国の国民であるための最低条件だ。


サニア教、その教えの一つ、『己の血を持つ子はどんな子であっても愛を込めて育てよ』

この国の法は宗教そのものと言ってもいい。

彼に子を捨てようなら弁護する余地もなくしょっぴかれる。

そしてかなり重い罰が下る。


こんな事情があってこの国では普通、子を捨てる親はいない。

親が死んだとしても親戚が責任を持って育てる。もしくは国が経営している施設で人材として育てる。

なら、ここにいる子は何なのか?


答えは簡単、『普通』じゃ無いのだ。



弟5人、妹7人


彼らのほとんどが、本来存在してはいけない者たちである。


種族の掟に背いて生まれた子。

忌子とされ殺されかけた者。

やんごとなき御身分の方々のいてはならない血脈。

特定種族間のハーフやクォーター。


他にも色々とあるが、基本はざっとこんなもんだ。

親も親戚ももうこの世にいない者も多いし他国からわざわざ捨てられに来たやつもいる。


今も祈りつづけているこいつらを見ると、獣人と同じように尻尾や牙があるのに耳がエルフのように長く尖っているような亜人にしてもあってはいけない特徴を持つ者。上級貴族に多い白金色などの髪を持つ者。左右の目の色が違う者、などなど。

ここに来る子供はみんなそんな子ばかりだ。

そして実はその多くが赤子の時でなく幼い頃に捨てられていて、オレみたいに産まれてすぐからここにいるものは少なかったりする。

ある程度育てたのは親の愛情だったりしたのかもしれないが、そこに愛があろうがなかろうが、親にどんな事情があろうが、子供にとっては捨てられたことに変わりは無い。

そして、子供は自分を包むその事実をなんとなく知っていた。


こいつらがここに来たばっかりの新入りだった時は、誰もが食事前に祈りなんか捧げようとしなかった。

ここに来る前、様々な事情があっていつ死んでも殺されてもおかしく無いような生活を送っていた奴らだ。

食事が出た瞬間取られまいと我先に食べようとする者、いきなり騒ぎ出す者、食べる気力すらなくただボーとしていた者、そこにあるのが食べ物とすらわからなかった者など様々な反応を見せたものだ。


シスターはそんな子供達一人一人に一生懸命付き添い励まし続け、そこに笑顔の花を咲かせようとした。

それは長い月日のかかるような決して効率のいいやり方ではなかったが、そこには確かな愛が込められていた。そしてだんだんとみんなが子供特有の本来の性格を取り戻していった。


寝起きこそあんな人なのだが本当に素晴らしい愛情深い人なのだ。


そのうち、誰もがいつの日か自然とシスターをまねて食事前に祈るようになった。

騒がしかった食前がこんなにも静かですこやかな時間にになった。


そして


「…………………………。それではみなさん」


「「「「「「「「「「「「いただきまーす‼︎」」」」」」」」」」」」」」」


「あ、トモシオ肉多いぞ、それはみんなでイオ兄ちゃんにとっておいた分だったんだぞ‼︎これ以上にいちゃん痩せたらどうすんだ‼︎」

「何言ってんだキキ、あいつはちょっと肉食わせたぐらいじゃ太らねーよ。食わせるだけ無駄だって何度も言ってんだろ」


「聞いてよマザー‼︎今日イオのやつが寝起きに私にセクハラしてきたのよ‼︎胸触られたのよ‼︎しかもリーアに抱きついてたんだから‼︎」

「メラはん、リーアはともかくそりゃ無いで。絶対ないで。いっぺん鏡で己の姿見てみりゃすぐわかりますやろ。わかったらイオ兄に勘違いしてスンマヘンって誤りや、そんで、お詫びとしてメラはんの分の肉をイオはんに渡しや」

「何ですってドーラ‼︎ぶっ飛ばすわよ‼︎」



食前の静かさに反比例して食事中がものすごくうるさくなった。



「「イオにぃ、昨日もスープだった」」

「ベル、ベロ、諦めなさい。うちにはもう食材どころか小銭すら危うい状況なんだよ」

「えっ?ほんとうに?たいへんだベル‼︎イオにぃ、またやせちゃうよ‼︎」

「たいへんだ!たいへんだ!ベロ、このままじゃあイオにぃが男の子になれないよ‼︎」

「「よし、肉を取りに行こう」」


…まあ、こんな風でも賑やかに食卓を囲うようになったのは嬉しいことではある。その内容は別だけど。

シスターはこの雰囲気が好きらしくニコニコしながら美味しそうにスープを食べている。



「うそっ、もう肉ないの⁉︎仕方ないなぁ私も行く‼︎」

「なあ、頼むから期待できない狩をするよりも農園行って手伝ってその報酬で野菜をーー」


「なんですって!兄さん、いつから食材ピンチだったんですか⁉︎」

「パルゥよ、うちは万年金欠だって知ってるだろう。いつ食べる物がなくなってもおかしくないんだよ。だから悪いけど今日はお前は何人か連れて農園の手伝いにーー」

「こうしちゃいられない‼︎みんな、今日は僕も狩に参加します。他にも何人か連れて行きましょう‼︎みんなで行けばきっと鳥の一匹もとれるでしょう。早くしないと兄さんが細くなりすぎて死んでしまいます」

「おーい、ちょっと、聞いてるパルゥ」


「イオイオ、あーちゃんの服直ってる?」

「ん?ああ、アンか。そういや昨日トモシオが破ったんだっけか?ごめんな、まだできてないすぐ直すからその間お前は依頼されていた内職でもーー」

「よかったぁ、イオイオが軽くなりすぎて死んじゃったらいやだから今日はあーちゃんも狩に行くことにしたの。最初から破れていれば破っても大丈夫だよね」

「いや、大丈夫じゃないからね、むしろ洗う手間まで増えるからね。お願いだから今日は家でおとなしくーー」

「イオイオ、こんどこそはおいしいものいっっっぱい取ってくるからね‼︎期待しててね‼︎」



…いつものことだが、こいつら、人の話を聞きやしない。

というかなんでみんなオレが痩せ死ぬこと前提なんだよ。



「おい、てメェら。今日はこのトモシオ隊長が山狩に連れっててやる‼︎この狩には今夜の晩飯とイオの命がかかってる。狩って狩って狩りまくるぞ‼︎」

「「「「「「「「「おーーーーう‼︎」」」」」」」」」



「おーいシスターこのバカども止めてくれ、こいつら人の話を聞きやしねぇ」

「あらあら〜、みんな元気があっていいですねぇ〜」

「全然良くねぇよ‼︎もう狩に行くなじゃなくてもいいから、せめて山菜とってきてでもいいからこいつら説得してくれ‼︎」

「イオちゃんは一緒に行っちゃダメですよ〜。本当に今夜食べるものがなくなってしまいますし」

「行かねえよ‼︎山なんぞに行ったらすぐに動けなくなって死ぬわ‼︎早くこいつらなんとかしてくれ」

「そうですか〜。よかった、これで安心してお花のお手入れができます」


ダメだ、この人も人の話を聞いてくれない……



「さあ‼︎お前らついてこい‼︎出発だ‼︎」

「「「「「「「「「ごちそうさまでした‼︎いってきまーす‼︎」」」」」」」」」


「いってらっしゃ〜い、気をつけてくださいね〜」

「シスター、たのむからなんとか言ってくれ…」

「なんとか」

「そういう古典的なボケはいいからぁ‼︎」



シスターが煎じられすぎてもう味もしなくなったボケをかましている間にトモシオを筆頭に弟妹の12人中10人が出て行きやがった。

どうすんだこれ、あいつらがまともに何か持って帰ったことなんて一度もないぞ。



「イオ、今日はあたし用事あるから‼︎」

「ブルータス、お前もか」

「誰よそれ」

「有名な裏切り者の名前だよ、メラ」


残っていた数少ない妹のメラもやっぱり出て行くらしい。

………まあ、こいつは仕方ない、かなぁ。


「っう、わかったわよ。しかたないから今日は家に残るわよ…………」

「…ハァ、いや、大丈夫だよ。実は今日はあいつらの狩が失敗しようが成功しようが肉がありったけ食える予定があったから気にせず行ってこい。ただし、帰ってきたらあいつらに家事やらせるの協力しろよ」

「え?本当に大丈夫なの?」

「大丈夫大丈夫、安心して早く行きなさい」


まあ、多分今日はアイツが来るはずだから大丈夫だろう。


「う、あ、ありがとう……せめて洗いものくらい手伝うわ‼︎」

「いいって、いいって。どうせそれもめどが立ってる」

「?…じゃあ、自分の分だけでも」

「気にすんな、この人数なら一人分くらい時間は変わらんよ。さあ、いったいった」


「あ、ありがとう。…………あのね、イオ」


「ん、どうした?」


「朝、殴ってごめん」


メラは顔を真っ赤にしながらそういうと勢い良く食堂から出ていった。

本当に、普段はいっつも不機嫌丸出しのくせに変なところで気を使うやつだな。ツンデレっていうんだっけか、こういうの?

でも、今日のあの怒り方じゃあ、こうなるのにもう少し時間がかかると思ってたんだが……


「おいシスター、メラになんか言ったか?今日のは千歩譲ってオレ殴られても仕方なかったから謝られないと思ってたんだが」

「イオちゃんのことですから〜、わざとじゃないんですよね〜っていっただけですよ。おかげで〜、メラちゃんのかわいいところが見れました。あとイオちゃん、シスターじゃなくて〜、ちゃ〜んと、マザーって呼んでください。」


やっぱりこの人がなんか言ってたか。


「あんたがオレのことイオくんって呼んでくれたら考えておくよ。それとシスター、あんたは自分の分は自分で洗えよ」

「イオちゃんが〜、私のことマザーって呼んでくれたら、やってあげましょう。ママでも〜、お母様でも可です。さあ、呼んでみてください」


結局、オレが言わなかったことでこの人はこのまま出ていってしまった。せめて大人だけでもちゃんとして欲しいものだ。




「……ねぇ、にぃにぃ。」

「ん、どうしたリーア?お前も狩に行きたかったか?」


最後に残った末っ子のリーアはまだスープをゆっくりと食べていた。


「……ちがう。ねぇ、どうして、にぃにぃは、マザーのこと、シスターって呼ぶの?」

「あー、まあ、心情的な問題だ。オレの気持ちの問題ってことだ。その点はシスターも理解してくれているはずなんだが納得はしていないみたいでね。あんまり気にしなくていいよ」

「……わかった」


まあ、転生者ありがちの悩みの一つなんだよね。

そう思いながらなんとなく、癖で長くて鬱陶しい髪を指でいじっていた。


「……ねぇ、にぃにぃ、その髪の毛、じゃまじゃないの?」

「リーアは自分の髪、邪魔じゃない?オレはこの髪の毛ものすごく邪魔に感じるんだけどね〜」


リーアはしばらく頭にハテナマークを浮かべていたが、オレが早く食べないとスープが冷めちゃうぞ〜というと思い出したかのように残っていたスープを勢いよく食べだした。


途中むせて、けほっ、けほっ、と咳をしていたのがなんとなくかわいかった。


次回からようやく一章です

プロローグ長かった

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