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世界は、狂わしいほど騒がしく、そしてーー  作者: やかやか
プロローグ「騒がしくも賑やかで」
2/23

一話目「計画はお早めに、というが早すぎたら立てづらいと思う」

しばらく説明会です。

 突然だが、人はいったいいつから自分の『人生計画』というものを立てるのであろうか?

 ちなみに興味のないものは「閑話休題」まで飛ばしてもらって何ら支障は無い。


『人生計画』文字どうり人生の計画である。

 それはおそらく、己の人生をどう生きたいのか?そのために何をしていかなければいけないのか?という感じのことを細かく決めていった計画のことである、とオレは思っている。


 例えば、わかりやすく《サッカー選手》になるための計画なら、

 まず、大会で優勝したりしてサッカーで注目されるくらい強くならなければならない。そのためにサッカーの強い学校やクラブチームに入りそこで仲間やライバルたちと競い合いたい。目指すはプロサッカー選手、そのために〇〇大学、そのために△△高校、そのために□□中学、そのために………

 のように大方の目標を決めあとはそれに向かって練習なり勉強なりすればいい。なれるとはは限らないが少なくとも計画とはこんなものだと思う。


 では、その計画を立てるためには何が必要か?


 いろいろあるとは思うが、結局のところどのような計画を建てる際でも必要なものは『情報』である。


 サッカー選手になるために必要な条件、強くなるための学校選び、自分が今すべきこと、自分が今出来ること、自分のライバル達のこと、これら全ての情報を全て把握してこそいい計画ができるはずだ。

実行するにしてもしないにしても立てるだけなら情報はあればあるだけいい計画が立てられる。


 だが、『情報』というのはそれに対する正確な『処理能力』が必要だ。

 子供はすべからくその能力に乏しい。サッカー選手になりたい子供の何割がそのための計画を持っているだろうか?

 いや、おそらくほとんどのちびっ子達は漠然とサッカー選手になりたいと願うばかりでそんな精密な計画は持っていないはずだ。


 人生計画、日本にはそれを立てるのにちょうどいいタイミングがいくつかある。高校選び然り、大学選び然り、オレは死んでから異世界転生して初めてそのような日本の子供達の育成の計画性のありがたさを実感していた。

日本は間違いなく可能性にあふれていた。




  閑話休題




 まあつまり、説明下手でわかりにくかったと思うが、結局のところ何が言いたいのかというと、記憶を保持して転生したものにとってこの状態こそが一種の転生チートなのである。

 前世より引き継がれた知識、知恵、身につけた技術に大人レベルの情報処理能力。

 これら全てを用いて自分がどのように生きるか、いや、どのように生きたいのかという壮大かつ精密で念入りな人生計画を幼少期で早いうちに時間を費やして立てるつもりだった。

そして堅実な人生を突っ走るつもりでいた。チートなりギフトなりフルに使ってでもだ。オレはそういう人間だ!

 そして、持ちうる情報をフル活用したその結果は、


「イオにぃ〜〜、ご飯まだ!!」

「イオにぃ、ハラヘッタ」

「イオイオっ、またトモがあーちゃん泣かした」

「わ゛〜んっ!い゛お゛にぃトモがあーちゃんのふくやぶっだぁあ゛」

「ちっ 違うイオ兄! こいつが勝手に」


 悲惨なものだった。


「テメェら‼︎静かにしろ‼︎早く飯食いたきゃ手伝うか向こうで遊んでろ!アンは服着替えておきなさい、トモシオ、飯減らすぞ」

 あゝ、こんなことなら記憶なんてなければ良かった、と何度思ったことか。せめてオレの精神年齢が幼ければこいつらに混ざって遊び散らせていただろうか…


『イオ』これがオレの今世の名前だ。そして現状は、もう、見たくもなかった。あ、スープ煮込みすぎたかなぁ………



 この世界で覚醒した時、そこは教会の前だった。

 はい、そうですよ、捨て子ですよ。

 前世では立派な父と優しい母に恵まれていたが今世では早速捨てられていた。

 粗末な布が敷かれているだけのような状態の網カゴで自分の状態を悟るのにそう時間はかからなかった。

 目に見えるのは教会、思い出すのは神を語るおっさんの戯言、そして動かしずらい手足、回らない口。

 転生したことは理解した。それ以外は理解したくなかった…


 それからはやくもいく数年。

 優しい兄姉に恵まれていた頃は良かった、本当に良かった、が、彼らとは歳離れていたため彼らが院を出て行くと必然的にオレが長男として元気で元気で元気すぎて困る弟妹達の世話をする番になった。


 イオ、12才。

 弟5人、妹7人。


 なんか、多くない?



「イオにぃゴハン〜〜〜」

「「イオにぃ、あそんで!!」」

 オレと兄貴達とは一番近くても4つは離れていたのに、このヤンチャな弟妹達とは2〜7才差とやたらと幅広い。


「……にぃにぃ、トイレ、つまって、るよ」

「イオ!薪木尽きたわよ‼︎今夜どうすんの‼︎みんな凍え死ぬわよ‼︎」

 どうして、一人くらい頼りになる兄姉が残らなかったのだろうか…


「イオ兄さん、回覧板届いてんだけど」

「アニキ、塗り薬切れてやがらぁ」

 なぜ、ほぼオレだけでこいつらの面倒を見なきゃならんのか…


「うるせぇぇぇえええええ‼︎飯はまだだっつてんだろうが‼︎」


 この状況とその他もろもろの情報を考慮すると、


「オレは今遊んでる暇はないんだよ‼︎」


 人生計画どころか、


「誰だトイレ掃除サボった奴は‼︎あと薪割りもだ‼︎さっさとしないと飯抜きだぞ‼︎」


 明日一日どう生きるかという計画すら立てることは困難であり、


「回覧板はオレじゃなくてもいいだろうが‼︎誰か文字読めるやつ読んでメモして次に回せ、そして薬は大切に使えっていっただろうが‼︎」


 立ててもそのとうりにいくはずもないため、オレは早々に手堅い転生チーターの道をを諦めていた。

もう一話あります

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