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世界は、狂わしいほど騒がしく、そしてーー  作者: やかやか
一章「ワンダーランドな勇者様」
17/23

第十二話「話の続きの続き」


「ーー次の質問なんだが」


先代勇者の人形は退室し、再び三人になった食堂。

入れ直された紅茶を味わいながら再び質疑応答戻る。


「何故、オレたち殺されたんだ?」


いろいろ聞きたいことはある。

例えばこの屋敷どうなっているのかや、何故この森に住んでいたのか?などなど。

しかし、今、何より聞きたいのはこの事である。

紫陰が何者なのかは本当に何となくだがわかった。

だが、なら何でオレたちは殺されなければならなかったのか?


紫陰が魔王ならわからなくも無い。

魔王からしたらオレたちは自分を倒しにきた勇者とその仲間である。殺すのに十分な理由だ。

だが、そうで無いとわかった今、オレたちが殺される理由が消えた今、オレたちはただただ戯れで殺されたことになる。

そんな事をされて黙っていれるほど、オレは仏のような心は持っていない。

是非とも納得できる理由を聞かせて欲しいところだ。……慰謝料もらえないなぁ何てことは考えてはいませんよ?


「クスクス…面白い事を言うわね。貴方、今生きているじゃない」

「は?いや、蘇生されたじゃん。と言うことはオレ思いっきり殺されたじゃん。あと何やかんやで2回も死んでるんですが?」

「なら証拠は?」

「は?」


こいつは何を言っているんだ?


「殺されたと言う証拠」


紫陰がまたわけのわからない話を始めた。


「いやいや、証拠ってオレが殺されたことは事実じゃん。犯人目の前じゃん。お前犯人じゃん。おまわりさんこいつです、殺人犯です。早く捕まえてください」

「クックック…警察と騎士団は証拠がなければ動けないなんて昼ドラでもやってるでしょう?なら試しに騎士団に駆け込んできなさい、大変です!さっき僕殺されました、って」


そうだね、街の警察的な存在の騎士団は証拠なしには動いてくれないよね…

他の国は知らないけど時代背景に対して不思議とこの国には"自白の強要"が存在しない。故にきちんと証拠や証言を集めて誤認逮捕などを徹底して防いでいる。……だからこそ、治安維持ができていない部分もあるのだが。


まあ、それは置いといて、少しイメージしてみよう。

あなたは街の交番のお巡りさんです。

ある日突然、小さい子供がやってきて『大変です!私殺されました‼︎』などと言い始めました。

イタズラかと思って聴いていたら、更に森の中で家があったとか、家の中が屋敷だった、とか、挙句身分を聞くと女の子かと思っていたその子は自分を男の子と言い張るおまけ付き。


な〜るほど、オレだったらーー


「……いい医者を紹介されそうだな」

「治療用の紅茶ならあるわよ?」

「…劇物は勘弁」


ーーこいつは何を言っているんだ?が、最初の感想である。その後、親を呼んで病院を紹介しそうになるだろう。


…確かに、殺されたという証拠がない。

だが、だからと言ってそれで果たして許すことのできるだろうか?


「……せめて謝罪のひと言でもあってもいいんじゃないか」

「何故?」

「何故って、お前はオレたちを殺すほどの理由があったのか?オレたちはお前に何かしたかよ!仮にしていたとしてもそれが殺していいほどの理由にはーー」


「不法侵入」


「は?」

今度は何言ってーー


「器物破損」

「………」

「殺人未遂」

「………………(ヤベ)」


なんか、思い当たる節がいくつも……


「人の家に勝手に入り込んでおいて、部屋一つを爆音で壊し、人形一体を粉砕。更には勇者様はいきなり斬りかかり、お友達は毒針を刺しに来て、さらにさらに逃亡先を血で思いっきり汚してくれた。それと、私はあなたを殺してはいないわよ、あなたが勝手に死んだだけ。さて、異論は?」


「……劇物飲まされて死んだやつは?」

「悪意も殺意もありませんでした。これで殺人罪は成り立たない。ちょっとした医療ミスだったけど結果的に全快している」


「か、過剰防衛?」

「殺意満々で襲いかかってくる相手を殺したことが?押し込み強盗があなた達の家に入って来て殺されそうになったらあなた達はどうする?」

「……生きてることを後悔するまでズタボロにされるな、うちの孤児院の場合」

「生きたまま脊髄を引きづり出してやるって、お父様が言ってたのです」


やっべ、反論できねぇ‼︎

そうじゃん。ほとんどオレたちが悪いじゃん。

なんかアリスが怖いこと言ってる気がするが今の状況、オレ達はちゃんと脊髄繋がってるどころか紅茶まで出されてもてなされている。

ほとんど強盗みたいな事しておいて殺されったってそれじゃあーー


「因果応報ねぇ」

「マジすみまっせんでしたーーー‼︎‼︎」

「ごめんなさいなのです」


ああ、因果応報である。

色々腑に落ちない点はあるが、裁判で確実に負けるのはこっちである。


「仏の顔も三度までと言うけれど、私は仏よりも広い心の持ち主だから三度以上でも許してあげるわ」


ああ、なんと言う事だ。

なんと広い心の持ち主であろう!間違っていたのは私たちの方であったのだ。

されど偉大なる紫陰様はお許しになられた!我々の罪は許されたのだ。

よって取るべき行動は一つーーー


「本当にすみませんでした。これ以上ご迷惑をおかけする前にオレ達は帰ることにしますね。さあ行くぞアリス。大人しくしていろよ。頼むからこれ以上何もするなよ!いいか、絶対何もするなよ」

「……?ああ、わかったのです‼︎」

「フリじゃねーからなぁ‼︎」


ーー電波が問題を起こす前に潔く帰ることである。

オレは席から立ち上がり、アリスを引き連れ勢いよくこの場から逃げ出す。


「待ってイオちゃん」


しかし、魔王様からは逃げられないらしい。

5メートルも進む前に回り込まれてしまった。


「な、何でしょう、紫陰様」


オレは限りなく引きつった笑みで応対する。何故ならーー


「ここからは大人の話」


ーー紫影様の笑顔が、目が笑っていないからである。

物凄く、嫌な予感がする。


「あなた達が壊した物の弁償」

「……あの、さっき許してくれるってーー」

「大体のことは許してあげるわ…でもね、仏でさえ助走をつけてオラオラする程、許せないことがあるの。何だかわかる?」


…………ヤベェ、やっぱり怒っていらっしゃった。


「えっと……神のラッパでぶっ飛ばした部屋のことですか?」

「違う、もっと後」

「……オレが血で汚した部屋かその後のこと?」

「違う違う。血はもう掃除したし、あなたが引き起こしてくれた大惨事は片付けておいた」


……後何したっけか?

オレ達がやらかしたことで高くつきそうなものってそれくらいしかーー


「貴方がゴーレムと思って壊してくれた人形のこと」


ーーああ、あれのことか。


「あれを壊したのはアリスなのですよ?」


いや、そうじゃない。実際壊したあのはアリスだが、


「指示を出したのはイオちゃん。だから責任は彼にある」


ーー『アリス、やれ』なんて、確かにオレが言った覚えがある。



「はい。言ったのはオレです。大変申し訳ありませんでした。あの、弁償させて頂きますのでお値段はおいくら万円でしょうか?」


いや、それ以前に針で魔力流し込んで魔力回路ズタボロにしたのはオレだからアリスはほとんど何もしていないと言ってもいいかもしれない。すでに壊れていたものを更に壊しただけなのだから。

ここは腹をくくって弁償しよう。まあ、どんなに高くても、最悪な手段だが金は稼ぐ方法はないにもないしーー


「神紅貨十万枚」

「ゑ?」

「神紅貨十万枚」

「リアリー?」

「イエス。大マジ」


説明しよう。

この国ではパン一個約銅貨一枚である。つまり銅貨一枚=100円くらいと思ってくれていい。


銅貨枚一万枚=大銅貨千枚=銀貨百枚=大銀貨十枚=金貨一枚


金貨一万枚=白金貨千枚=黒金貨百枚=紅貨十枚=大紅貨一枚


大紅貨十枚=神紅貨1枚


つまり、


「嘘つけ‼︎国がダース単位で買えるじゃねぇか‼︎」


ーー日本円に変えて景を超える。



「嘘じゃない、本当」

「いやいやいやいや!どうやったらあの人形一つにそんな価値がつくんだよ‼︎」


物凄くありえない。

思い返せば懐かしき日本。

日々溢れるニュースでこんな金の単位を見たことがあるだろうか?いや、ない。

そもそもアレは人形である。

あれがどんなに素晴らしく、価値のあり、高名な芸術家が作った歴史ある代物でもそんな値段が付くはずがない。

ごく稀にニュースを騒がせた歴史的芸術品の落札でさえ、そんな単位は付かなかった。


そんな価値付くはずがーー


「外殻、綿は原初の世界樹から取れたもの」


付くはずがーー


「回路に用いられていた線はオリハルコンをベースに大量の賢者の石を溶かして作り上げた特殊合金」


……付くはずが、


「糸は幼い頃から育てた魔蜘蛛の希少種から取れる糸を永い時をかけて紡ぎあげたもの」


……。


「生地は万年に一度脱皮する神龍の皮を加工したもの」


………………。


「その他、国が買える程度の素材は沢山使ってあった。あれ一体を作るのに何百年時をかけた。さて、質問は?」


「……何で、そんな物が爆発ごときで簡単に壊れたんですか?」

「貴方が事前に魔力流し込んでズタボロにしたから」


「……証拠は?」

「人形の破片を貸してあげる。街で鑑定してもらうといい」


「……何でそんな大切なものを出していたんですか?表に出さずにしまっておけばーー」

「私が神様みたいなものだって言ったでしょう?だから、たまに面倒な輩というやつが来るの。相手が誰でも対応できるようにするために常に戦闘態勢をとるため。あの人形を破壊できたのは貴方だけだったけど」


「……そんな使い方していたならいずれ壊れたのでは?」

「いずれではなく今壊れた。貴方が壊したことには変わりない。貴方が壊したのよ、お咎めなしとでも?」



あ、これ嘘ついてない。

それどころか多分、神紅貨十万枚でも安く見積もってるかも知れない。


「ごめんなさい。許してください紫陰様」

「ダメ。お前は私を怒らせた」

「僕、孤児。お金ない」

「大丈夫。お金はいらない」


「え?じゃあーー」


「代わりに貴方をもらう」


………………ん、聞き間違いかな?


「今何てい「貴方をもらう」………た」



…………。


…………………終わった。

色々詰みかけていた今世の人生であったがまさかこんな詰み方をするとは…。


「 イオりんはアリスのものなのです!」

「残念、今日から私のもの」

「…オレ、だれのものでもないのだけど」


国をダース単位で買える金額分の弁償ってあと何回生まれ変われば払えるんですかね?少なくとも今世じゃダメだろうなぁ。


「誰のものでもない?嘘。ちゃんと主人はいるはず」

「……いないよ」


……いてたまるか。あの人は"主人"ではない。


「でもそのうなじのーー」

「いない!これ以上はやめてくれ」


それはオレが絶対に触れられたくない事柄の一つである。


「イオりん?」


特に、アリスには聞かせたくはない。


「何でもない。で、紫陰さん。オレはこれからどうすれば?」

「イオりん⁉︎」

「アリス、悪いが少し静かにしていてくれ」


だから、早急に話を戻すのが一番だ。


「そのうちこちらから会いに行く。それまでいつも通り暮らしていて構わない。次会った後も大して変わらない日常は保証する。それに拷問じみたことをさせるわけでもない。それは安心してもらっていい」

「…了解した。思ってたより鬼畜な感じじゃなくてよかったよ」


正直いうと、体から色々剥ぎ取って魔法使って再生させての繰り返しとかまで覚悟していた。というのもオレに価値があるとしたら一番早く搾り取る方法がこれだからだ。オレの身体は全身余すとこなく貴重な魔法素材になるからよく売れるからな。

だが、そうでない上にいつも通りの暮らしまで保証してもらえるらしい。


「紫陰さん」

「なに?アリスちゃん?」


オレが少し安心していると今度はアリスが話し始めた。


「イオりんをここに連れてきたのも、こんなことになったのも元はと言えばアリスのせいなのです」


アリスはアリスでそれなりに責任を感じていたらしい。


「だから責任はアリスも「いらない」」


だが、そのアリスの言葉は途中で遮られてしまった。


「で、でも……アリスだって悪いので「貴方はいらない」」


アリスの言葉を遮ると、紫陰はいったん紅茶を口に含んだ。

ただ、何処か優雅に見えるその姿とは裏腹に、この場を包む雰囲気は一気に鋭くなるのを感じた。


「貴方は勘違いしている。イオちゃんだけに責任を取らせているのではない。アリスちゃんには責任が取れないの。今の貴方には責任に見合う価値がない。だから貴方はいらない」

「ア、アリスだって色々出来るのです!きっと役に立つのです!例えばアリスは勇者だからーー」

「たかだか勇者如きになにが出来るの?その力を使って私のボディガードでもしてくれるの?残念だけど中途半端な力ではなにも守れないのよ」

「紫陰!それは言い過ぎじゃーー」

「イオちゃん、今度は貴方が黙っていて」


その言葉でオレは何もいうことができなくなってしまった。

例えるなら学生時代に、やたらと怖い先生に面と向かって叱られているときのような、そんな気分の10倍は怖い心情である。


「勇者は必ずと言っていいほどつけあがる傾向にある。それは勇者として育つ環境のせいでもあるから仕方ないのかも知れない。でもね、だからと言って取り返しのつかない事態を招くことになっては遅い。私はそんな奴を何人も知ってる。そんな目に遭わなくては成長できなかった奴ばかり、アリスちゃん貴方だってそうよ」

「………なにが言いたいのです?」

「貴方は勇者様、とてもとても重要で、偉大で、壮大で、英雄で、希望の存在。でもね、それが貴方の価値の限界。貴方は自分が、たかが勇者だということを知りなさい。たかだか勇者、神の作ったシナリオの上で踊るだけの存在が、私の役に立てることなど何も無い」

「で、でもーー」

「それに未熟もいいところ。まだまだ弱いどころか自分の力を制御できていない。イオちゃんの体を調べた時、いくつも骨折や破裂の跡があった。普通に生きていればこんな事にはならない。貴方のせいでしょう?アリスちゃん。イオちゃんを守ると言っておきながら、一番傷つけているのはーー」


「紫陰‼︎」


今の紫陰の言葉を止めるのは、はっきり言って怖かった。


アリスを叱りつけるかのようなその言葉を発する紫陰には、まるで竜をも黙らせるような雰囲気が出ていたのだ。

言葉どころか、呼吸すら忘れそうになるほどの覇気。

ほとんど抑揚の無い紫陰の口調にそれ程までのものを感じてしまった。


「もういい」


だが、それ程までのものを感じ取ってでさえも、紫陰のその先の言葉を、今のアリスに聴かせてしまうのはもっと怖かった。


「…………」

「もういいだろう、人形の賠償はオレがするから、だからもう帰っていいか?」

「イオちゃん、さっきも言ったけど、勇者ていうのはその環境上、未熟な者が多いの。特に精神面でね。それはタチの悪いことに大人になっても治らない、治しようのないものもいる。だからこそ、私はこんな言い方をする。きっとアリスちゃんはこの先ずっと強く否定してくれるような人には出会えないから」


その言葉は先ほどまでの様子とは違い、まるで出来の悪い後輩に教える先輩のような、どこか優しさのようなものを感じるものであった。


「だとしてもまだ子供だ。ここまでいう必要はない」

「いいや、子供だからこそ言わなきゃいけない。間違いを起こす前に矯正をしなければいけない。残念だけど、失敗を成功の素にしている時間は勇者には無い」

「だとしてもーー」


「わかったのです」


唐突に発せられたアリスの強い言葉は、平行線になりかけたオレと紫陰の会話を途切らせた。


そして再び、オレは次の言葉を発することができなかった。

なぜなら、アリスは今までに見たことのないくらい真剣な表情でをしていたから、それでいて強い意志を持って言葉を続けたからだった。


「わかったのです。今のアリスが未熟で、今は何もできないことも、アリスがいっぱい間違っていることも。だから、いつか、アリスにイオりんと同じくらい責任を取れる能力が身についた時にはアリスにも一緒に人形の弁償をさせて欲しいのです。そしてそれが終わった時は、ちゃんとイオりんをかえして貰うのです。今は、それだけ、約束して欲しいのです」


「………嫌だと言ったら」


「ーーアリスがこの場で、今死にます」


………は?


「いやいやいやいや、ちょっと待てアリス‼︎早まんな!一旦落ち着こう!落ち着いて考え直せ‼︎」

「イオりん、今度はイオりんが黙っている番なので少し静かにしていて欲しいのです」


オレは、アリスがまた急に電波的な発想で訳のわからないことを言い出した…と、思った。

だが一瞬で、その考えが今のアリスに対して失礼であったと考え直すほど、アリスの言葉も表情も真剣味を帯びていた。


「紫陰さん、貴方はアリスも生き返らせてくれたのです。でも、人形の弁償をさせたいだけならイオりんだけを生き返らせてアリスはどこかに保管しておけばいいのです。そうすればアリスを人質にイオりんを自由に出来たのです。でも、紫影さんはそうはしませんでした」

「……ええ、そうね」

「それはあなたが優しいからということもあったのでしょう。でも本当の理由は違うのです」

「……何が言いたいの」

「あなたはアリスに手を出せないのではないですか?さっき、勇者は神様に与えられた運命だと言っていましたよね、つまり、神様に近いあなたがアリスに手を出せばきっと怒る神様がいるのです‼︎」

「………。」

「ご自慢の人形は壊れたのです。紫影さんは強い人に襲われても生身で戦わなければいけません。さて、どうしますか?もしイオりんを返してくれると約束してくれないのなら、アリスはあなたを道ずれにするためにこの場で死ぬのです。生き返らせても死ぬし、追い出されても紫影さんが原因だとわかるようにして死ぬのです。もう一度聞くのです、約束してくれますか?」



……まるで、場違いなのはオレの方では無いのだろうか?

アリスはこの短い時間で理解できた範囲で、その情報を駆使して最良とは言えないかもしれないが、有効的な一手を投じた。

オレが紫陰の言葉をただただ受け入れていたこの状況で、アリスは交渉出来る段階へと一気に引き上げたのである。



「………60点、ギリギリ合格点…かしら?その推理はすべて正しいわけではない。だけどまあ、大体あってる。まあ、一番の驚きはこの短時間で正解に近い答えを出してそれを私に叩きつけてくれたことかしら?」



先ほどまでのの雰囲気とは更に一変、紫陰がアリスに感心しているのを感じた。



「わかった、約束する。でも、この件に関してでのあなたの価値を判断するのは私。貴方がいつまでたっても無価値なままだったら一生イオちゃんは戻ってこない。そう思ってちょうだいね」

「わかったのです」


そう言うと紫陰は最後の紅茶を飲み干した。

アリスもそれに合わせてカップを傾ける。


「なかなか面白い一日だった。今日はもう帰りなさい。またすぐに会うことになるから今度は普通にティーパーティーを楽しめるといいわね。それじゃあ、勝手口はこっち」


オレたちは席を立つと紫陰に従って出口に向かう。

あれだけ探し回った出口は、事もあろうに1分もしないで到着する。




誰もいなくなったテーブルの上には、オレのティーカップにだけ、ほんの少し冷めた紅茶が残っていた。




ーーーーー



「甘やかしすぎて教育に失敗したと思っていたら、腐ってもあの二人の子供…ということかしら?さて、少しやりすぎてしまった。出会い頭に殺されないようにしないと……」



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