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世界は、狂わしいほど騒がしく、そしてーー  作者: やかやか
前世の終わりのエピローグ
1/23

こんな死後の世界はイヤだ

読んでくださってありがとうございます。

ごゆるりとお楽しみください。

 人生とはどうにも上手くいかない。

 それでも何や感やで頑張って、必死こいて生きていればそれなりの結果が付いてくる。

 そんな感じで俺は一生懸命生きてきた。だが、


(ああ、俺は死んだのか)


 本当に、上手くいかない…


 悔いはある。まだ成人すらしていない。やり残したことだらけだ。それでも死んでしまったのでは仕方ない。だから、大人しく成仏した。




「ドーモ、神様です。君死んじゃったんでぇ、テンプレ通りに転生してもらうんでよろしくぅ」


 それでも、これは、あんまりではないか…


「何で女神じゃねえんだよ!俺死んだんだぜ、もうちょい労われや!あとお前、せめてもうちょい神様っぽい格好しやがれってんだ‼︎んだよ、ジャージって舐めとんのか!あともうちょい神域的な神聖感溢れるようなトコじゃねえのかよ‼︎」



 目の前に現れた神を名乗る奴は、ボッサボサの手入れなど全く行き届いていない茶髪をしたジャージ姿のおっさんである。しかも場所はファミレスのような、いやどう見てもファミレスの一席である。だってメニュー表に西日本で有名なあの店の名前が書いてあるもん。それに他の席にも客っぽいのもちらちら見える。おかしい、どう見てもおかしい。


「もうちょいもうちょい、うっせえよ、クソガキ。こちとら神様だぞ、もうちょい敬えやコラ。敬語も使えねえのか?これだからユトリは」


「敬語っていうのはな、敬う相手に使う言葉なんだよ。今のお前、敬われ要素ゼロなんだけど」


「んだよ、目上の人は敬えってマミーに教わりませんでしたか?そんなんだと社会出ても上手くやっていけないよ。早死にするよ。っあ、ごめーん、もう死んでたかぁ(笑)」


 こいつうっぜぇ。絶対神様じゃないだろ、おっさんじゃねーか(怒) 。何だよ(笑)って今時使わねーよ、みんな草生やしてるよ。


「だいたいねえ君、何の神も信仰していなかったでしょう。そのくせして女神に会えるとか思ったら大間違いです。可愛い子はみんな売れちゃってんの、何処の宗教でも看板娘は引っ張りだこなの、残ってんのは必然的に就活にあふれたおっさんばっかなの。だから君みたいな無神教者を導くのは必然的におっさんなの、ドゥーユーアンダスタン?」


 知りたくなかったよ、そんなこと。


 もう何も言えなくて呆然としていると、このおっさんは事もあろうにタバコを吹かし始めてから


「定員さん、枝豆一つ、塩多めで」

 

「お客様、こちら禁煙席でございます」


 ……どう見ても神じゃない。


「なあ、ちなみに聞くが普通死んだら天国とか地獄とかじゃないの?神のラッパ聞きながらどっちかに送られたり、閻魔様が判決下したり、天秤に乗せられたりしないの?」


 店員が0円スマイルのままおっさん神が吹かしてたタバコを握りつぶして消してからいなくなり、なんか気まずかったので気になったことを聞いてみた。


「だから君はどの宗派でもないでしょ。神様を信じなかった人が天国とか地獄とか贅沢言ってんじゃないの。誰も自分敬わない奴にラッパの演奏とかしたくないからね、天秤だって数限られてんの、閻魔様だって忙しいの、そして俺だって暇じゃないの。1日に何人死人が出るか知ってる?そのうち何人無神論者か分かる?君みたいなの最近増えてんだから大変なんだよね。1日のノルマは増えるのに時給は上がんないんだぜチキショー。だからさっさと手続き終わらせるよ。後つっかえてんだから」


 なんかまた愚痴が始まった。

 やっぱりこいつクッソ面倒くさい。俺は気持ちを隠そうともせず、深くため息をついたあと、何となく辺りを見渡すと別の席も同じような状況の奴らがいた。いっぱいいた。あ、目があった。もう何も言うまい。


「はい、じゃあ説明始めまーす。君が次に生まれるのは剣と魔法のファンタジーです。それからこの箱の中にいっぱい紙切れが入ってるんでそれ一枚だけ引いてください」


 おっさんは何処からともなく箱を取り出した。ダンボールの…

 見た目はあれだが、それって


「それってもしかしてチートでも決めるのか!」

 そうだ、こいつはさっき『テンプレ通りに転生』って言ってた。ということはやっぱり、


「はっ?チート?何言ってんだてめぇ、そんなもんなりふり構わず配ってたら誰もが勇者と魔王だわ。んなあぶねえ状況作ってたらこっちのクビが飛ぶわ、物理的にも。偉い人に怒られちゃうから。まったく最近の若者は口を開けばチートチートチート、ちょっとは自分の努力で掴み取ろうとはしないのかねぇ。これから君に渡すのは『ギフト』、才能だよ。磨けば光るから。磨く努力を怠る奴に限ってやれチートだ何だって言い出すんだからほんと。ほら、わかったらさっさと引いた引いた」


 違ったようです。一体何処がテンプレだよチキショー。なんだよ、なんとなくわかってたよ。期待なんかしてねーよチキショー。


 …でも、言ってることは確かだな。どんな結果も努力無しなら何にもならない。棚ぼた式の力なんてそのほとんどが自己満足に終わるのがオチだ。自分の成長にも他人の成長にもならない。それどころか傲り高ぶる勘違い野郎としてあちこちに迷惑をかけ続けたかもしれない。せっかく生まれ変わるんだ、死んだばかりでこんなことを言うのもなんだが、いい生き方をしたと胸を張って死んでいきたい。なんだ、なんか浅ましくチートなんて言った自分が恥ずかしくなってきたな。


「わかったよ。何も考えずにチートなんて言って悪かった」


「わかりゃいいんだよ。君はまだ若いんだ、死んだのは運が悪かったが生まれ変われるんだ。自分が間違ったと思ったら一つ一つ反省すればいい。そうやって自分の価値観を矯正していくことも成長であり努力なんだよ。ほら、わかったらそろそろ引け」


 俺が少し反省した態度でいたら、おっさんは先生みたいなことを言い出した。

 まあ、こんなふうに教えを施すところが腐っても神様なのかもしれない。


 そんなことを考えながら俺はダンボールの中を弄った。

 もちろんチートじゃないことはわかってるが、それでも少しワクワクする。いったいギフトはどんなものだろうかと。

 このおっさんは剣と魔法のファンタジーと言っていた。ということは魔法や剣の才能だってあるに違いない。非科学的なものが期待できる世界だ。ここでもらえる才能次第で俺の次の人生が決まるかもしれない。


 そうして俺は一枚の紙を取り出した。

 いったい何が書かれているのか、そこにはでかでかと、


  "大吉"


 …と、書かれていた。


「おい、普通ここさあ、なんかスキル名とかどんな才能かとか書いてあるところじゃないの…」


 するとおっさんは、

「おっ、大吉じゃん、おめでとう。チートプレゼント」

 などと今までの流れをぶち壊しになることを言い出しやがった。


「おいおいおいおい‼︎ちょっと待てコラ‼︎テメェさっき散々チートあれこれ言ってたくせにそりゃないだろ⁉︎貰いづれーよ、めっちゃ貰いづれーよ」


「でかい声でウッセーな。ここ何処だと思ってんの?ファミレスだよ、西日本で有名なジョ◯◯ル冥土店だよ。東日本の人は知らない人多いからね。子供じゃ無いんだから店ではしゃぐんじゃ無いよ。TPO考えてよ」


「死後の世界でこんな状況用意した奴に言われたくねぇ‼︎」


「まあまあよかったじゃないか、これで君も勇者や魔王と同じ化物だ!俺Teeeeできるじゃん。よっ、人外!人間辞めた気分はどうだ?」


 もうやだこいつ


「それじゃあ、手続きも終わったし行ってらっしゃい、気をつけてね〜〜、次は大型トラックにひかれないように」


「おい待て、せめてなんのチートか教え「バイビー」マテェェェエエエエエエエッッッっっ‼︎」




 こうして俺はグッダグダな状況で次なる人生を始める羽目になったのだ。

本当にどうにも人生うまくいかないらしい。

願わくは次の人生はもう少しうまくいきますようにと俺はこの神以外に祈ったのであった。



~~~~~~



「えーっと、次の人?なになに大型トラックで少年引いた後人生パーになって自殺したの君?ダメだよー自殺はいかんよ。他の宗派じゃ口も聞いてもらえなかったぞ。生きていればいいことだってあ「お前に何がわかる‼︎俺がなあ、どんな思いでーーーーーーーーーーーー



本作品はフィクションです。実在する人物や団体とは一切関係ありません、許してください。


初回は3話投稿です。

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