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まるいち-1:神埜水月
第二話「まるいち-1:神埜水月」
神無月水月は困惑していた。何に困惑していたのかというと、自分の名前が変わったことにだ。彼女は母親の再婚により、姓が神埜から神無月に変わった。彼女は六月、すなわち水無月の生まれなので、水が無い月にも水に困らないようにと、水月と名付けられた。これは、彼女の亡き父の母、つまりは祖母が考えた名前であり、「どんなに苦しくっても、お前にだけは神様が水を与えてくれるわよぉ」と教えられて育ってきた。それなのにだ。自分の名前から神がいなくなってしまった。これからどう生きればいいのだろうか。彼女は己から消えた神に――嘆いた。