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一人ぼっちの魔法使い  作者: mikibo
第一章 仲間
4/5

高貴なる転校生と僕たちの秘密

僕たちの担任であるマルベル・コルニル先生である。

身長は僕よりも低いというかテトラよりも低い。

しかし、その年齢は僕たちよりも多く20歳だという。


「みんな席に着きましたか?今日は編入生を紹介しようと思います」


その一言で教室が沸く。


その声はみな新しい編入生に対する想像に関するものだ。


「落ち着きなさい。……では、入ってきてください」


ドアが開き、入ってきたのは身長は僕と同じくらいの髪を伸ばした金髪の女の子が入ってきた。

たくさんの好奇の視線の中を堂々と歩いてくる。

そう、第一印象は凛々しいかな。


うん。

先生の近くに園子が行くと先生の髪も金髪なので先生がその子の妹にしか見えない。

ゼプトも同じ考えに至ったらしく、こっちを見て笑っている。


「では、自己紹介をしてください」

「私はアト・ディレール・ラスガダス・メスティエルです」


どこかで聞いた名前のような気がする。


「アト・ディレール・ラスガダス・メスティエル。ラスガダス王国、第三位王位継承権保持者。歳は15。身長は167cm。体重は…」

「テトラ、スト~ップ。人のプライベートな情報を暴露しちゃだめだよ」

「ごめん、ついくせで」

「くせでって、えっ!身長167cm?負けちゃったよ。後2cm足りない。身長低くはないと思っていたんだけどな」


身長、後5cm欲しいな。


「私より断然高い」


視界の隅で編入生が呆然としている。

僕の周りの在校生は騒然としている。


突然、プライベートを暴露されかけたからだろう。

在校生は、謎だ。身長、この子より高い人もいるのにな。


「そこの天然コンビ、驚くところ間違ってるぞ」


ゼプトがこちらに言ってくる。


「どこが?」

「なにが?」


僕とテトラはそのまま言葉を返す。


「ゼプトも全然驚いてなさそうだしね」

「俺はクラス委員だから事前に知っていたんだよ」

「その話を聞いたとき僕も一緒にいたけど、全然驚いてなかったよ」


ヨタがゼプトをいじる。


「こら、そこの天然カルテット」


先生がこちらに向かって怒っている。


「カルテットってなんかかっこいいかも」

「テトラ、そんな事言ってるとまた仕事行きになるよ」

「それは嫌」


と、黙る。


「王族ということもあって、皆さんは接しにくい……「ねぇ、アト。身長を伸ばす方法知らない?」こらっ!「ノナンよりも私が先に教えてもらうから」待ちなさい。「王族って大変?」質問は…「良かったら後で、校内のことに説明するよ」…後にしなさい!「質問じゃないんですが」もういいわ。あなたたち4人は、今すぐ出て行きなさい」


僕、テトラ、ヨタ、ゼプトの順だ。

ゼプト、不憫だ。


「面倒です!」


ギロッ!


「行ってきます。超級魔術『集団転送』」


クラスのみんなの驚いた顔を見ながら、ギルドについた。


「すいません。調子乗りすぎて、全員連れてきてしまいました」


だけど、僕は知っているテトラが確信犯だということに、多分、ヨタもゼプトも気づいているだろう。

そして、アトのほうに目をやるとテトラのほうをじっと見ている。

アトってもしかして、かなり魔術使えるのかな?

まぁ、いいや。

ゼプトがんばって、と目で合図を送る。

それを見たゼプトは、やれやれという感じで、先生に提案した。


「今から仕事を請けませんか?」


「あなたたちは、まったく。でも、いい考えかもしれませんね。皆さん、五人組に分かれてください」


クラスはアトを入れて、35人。

僕たち以外のところが、全員分かれる。


「やっぱり、こうなるのね。では、アトさんには、あそこのチームに入ってもらいますよ。いいですか?」

「はい。でも、大丈夫なんですか?実力のほうは?」

「えぇ、まぁ。高いと思いますよ」

「ならいいです」


何を話しているかは、読唇術でわかっていたので、ちょっとやる気を出してみようかと思い、みんなに伝えた。


「なんかちょっといらっとするけど」

「しかたがないな。クッキー5枚でどう?」

「忘れる」


と、アトが来たのでカウンターへ向かう。


「あら、新しい子が増えたのかい?」

「うん。まぁね」

「私は、シエラよ。ここのギルドの支店のマスターをやっているものよ」

「アト・ディレ…むぐっ!」

「ここでは名前だけでいいよ。その名前全部言うだけで狙われるかもしれないよ」

「ねぇ、シエラさん。今請けられる、仕事でお勧めは?」

「これなんか、どうだい?」


差し出されたのは、ベヒモス、AA相当だ。


「いいと思うけど、みんなはどう?」

「おれは別に問題ないぞ」

「それって遠い場所?」

「結構近いよ。ここから、5分」

「じゃあ、いいよ」

「で…「いいよ」ヨタもオッケイと」


振り向いて、アトの方を見る。


「街を簡単に滅ぼすようなまず、ひとつ聞いていいか?」

「えっ?うん」

「ラ…「CCC」無謀だな」


何が言いたいのかはわかっているから、最後まで言わせず答えを告げる。


「じゃあ、アトは行かないみたいなので、4人で…「いや、私も行く」すいません、5人で」

「はいよ。どうする、転送装置使うかい?」

「走っても5分だしね。どちらでもいいよ」

「ちょっと待て、お前らは隣町まで走るつもりか?」


依頼の紙を見ていたアトが聞いてくる。


「そうだけど?距離にして5キロ位かな」

「…初めだし転送装置を使っていきなさい」


シエラさんのありがたい申し出に便乗する。

普段はただでは乗れない。


2分後


隣町のはずれにある森の奥にある洞窟に僕たちはいた。


「暗いね」

「そうだな。さくっと倒すか」

「ヨタ、そっちはどう?」

「いいよ」


PMDの画面が出る。


「ベヒモスは、外側の甲羅が硬く魔術を跳ね返すので、内部または下から攻めます」

「了解。っていうか、もはや作戦じゃないよな、これ」

「気にしちゃだめよ」


 -  それは明るく 道を照らす光  -

   - その光に 強き力は宿る  -



光の玉が中を舞う。


奥に進んでいく。


魔物には出くわさない、なぜなら、光の玉の探知で感じた瞬間にこの光の玉が倒している。


「いた」


もぐり始めてから、約30分くらいだ。


目の前に大きな空洞が見え、そこを影からのぞくとその大きな巨体が見えた。


「誰がやる?」

「じゃんけんでいいか?」

「最初はグー…」


シャキーン。刃物特有の音がする。


「えっ」

「こんなふざけたことには、付き合ってられないな」


と、ベヒモスにPDMを大剣にして切りかかる。


カーン


甲高い音とともに剣がはじかれる。


「ちっ!『紅破刃』」


数式がアトを中心に表示され、剣が炎を纏う。

剣を振るが、これも傷一つ負わせることができない。

ベヒモスの硬さは、上級魔術をはるかに凌駕する。

アトも弱いわけではないのだろうが、何か焦っているようにしか見えない。

実際、焦っているのだろう。

数式が出ているのは自分の思考を抑えられていない証拠みたいなものだからだ。


ベヒモスが手でなぎ払うとかわすこともできずアトが軽く飛ばされる。

さらにベヒモスは見た目とは裏腹に速い。


「えっと。誰が行く?」

アトが飛ばされるのを横目に見ながら、みんなで考える。


「この洞窟だとテトラの魔術は崩壊するし、ゼプトはアトを巻き込むだろうし。ヨタは?」

「時間がかかる」

「ということは、僕な訳だ」

「がんばって。久しぶりの出番だよ」


テトラの応援にこたえるかのように、僕はPMDではなく、首からかけている丸い宝玉を握る。

そして、呟く。

  

   - 起きて ミストルティン -  


宝玉が光、弓の形を成す。

僕の魔法の初歩だ。

宝玉はたくさんあって他の宝玉を取り込めば、その力を使えるとミストルティンは言うのだが、まだ見つけたことはないので、弓と風と水しか使えない。

そう、『言う』。

ミストルティンは魔法による疑似人格を持っている。

つまり、会話も行うことができるのだ。

しかも、PMDと同じことができるので、発動体に使っているのは主にこっちだ。

これが魔法に関係しているなんてことは言えないので、なんかよくわからない機械といったら、みんな納得してくれた。

唯一興味を示したテトラはお菓子で封じたけどね。


   - 我は銀翼を担いし者 風よ ここに集え -


構えて照準を合わせる。


   - 風の加護に 感謝を捧げ -


ベヒモスが一撃を加えようと手を振りかざす。

だけど、僕は焦らない。


   - 其の加護の力をここに示さん -


アトが目を瞑る。

そんなとこで諦めるくらいなら突っ込むなよ、と思いながらも、口は魔法を紡ぐ。


   - 其の手段は 打ち貫く ただ一つ -


風の矢が生まれ放たれる、ただそれだけ。

しかし、ベヒモスはその場に縫いとめられ、息絶える。


「お見事」

「さすが、ノナン」

「やるな」


みんなの賞賛を後にしながら、アトに近寄る。


「私は生きているのか?」


バシッ!


すごい音がしたと思ったら、いつの間にか僕はアトの頬をたたいていた。


「!?」

「王族だかなんだか知らないが、そんなものはくそくらえだ。自分の命に責任の持てないやつが王になれると思ったか?」

「オロオロ。ノナンが暴言を。私、そんな子に育てた覚えはないわよ」

「オロオロって言葉にしちゃダメでしょ」

「それ以前に、僕、テトラに育てられた覚えがないんだけど」


一瞬で場の空気をコメディーへと変えてしまう。

そして、こんな会話それだけで僕の怒りは収まってしまう。


「じゃあ。帰るか」


ゼプトの声でアトの手を引っ張って立ち上がらせる。


「そうだね」 

「テトラ、跳べる?」

「大丈夫みたい。ベヒモス特有の魔術攪乱かくらんも消えているからね」


と、ヨタの質問にPMDを起動させることで、テトラが答える。


発動する直前に誰かの視線を感じて、そちらを見るが探しおえる前に僕の目の前から洞窟が消えた。



後に残された洞窟の中で


「ほぉ、気配を抑えたつもりだったのだがな」


と、影が一人ごちて消えた。



「これがベヒモスの甲羅です」

「私としては、それよりもこのPMDに電子化して入れる方法を教えてほしいんだけどね」

「前に技術提供しましたよね。たしか、1種類のものを10kgまで、その上100種類入るようにしたじゃないですか」

「ヨタ君には感謝しているんだけどね。それだと、D級までしか恩恵を受けないじゃない」


D級までの仕事はすべて採集系統だ。薬草などはまだ人工栽培などできていないものがほとんどのため、取りに行くという仕事が存在するが今までリュックなどを持っていかなければならなかったのだが、ヨタのプログラムのおかげで楽にはなったのだ。

C級以上の討伐によって得られるものは相応にして巨大だ。

10kgなんて超えてしまうものなんてものは星の数ほどある。

ベヒモスの甲羅は、約1tだ。

だから、普段は一部分しか持って帰ることはできない。

ちなみに、僕たちのPMDにダウンロードされているのは2t仕様だ。


「そちらの持ち札は?」


ヨタの顔に真剣さが宿る。


「あなたの超過労働とノナン君がアトちゃんを殴ったこと。この二つね」

「それだけか?」

「簡単に明かすと思う?」

「それもそうだな」

「なっ…」


アトの驚いた顔が面白いが、このシエラさんはかなりのやり手だ。

当然、僕がやったことも知っている。

ヨタの表情は崩れない。


「超過労働については、相応の技術提供で答えたはずだ。殴ったのにも正当な理由がある」

「そうね。だけど、あの子の親はどう思うかしら?」

「親は関け…「ゼプト、アトが邪魔だから一緒に外に出ていてくれない?」…はなせ!ひゃう!なぜだ、私が言えば…」


抱きかかえられた時のアトが真っ赤になっていたのは笑えたが、ここは戦場だ。

何が武器になるかわからない。

そこに落ちている、ただの石、棒切れ。それだけあれば武器になる。

そう、考えもせずにいらないものだと情報を捨てまくると自分に返ってくるということだ。


「この国の王、デリハール・ディレール・ラスガダス・メスティエルは、簡単に言うと親ばかよ。それも重度のね。つまり、…」

「親ばかだからこそ、アトの将来のためにこの殴った理由の正当性を認めるはずだ」


ヨタはシエラに最後まで言わせることなく反論する。


「あなたはやっぱりなかなか手厳しいわね」

「おほめに預かり光栄です」

「禁書の違法所持なんていうのはどう?」


今朝にやったこともばれているらしい。


「証拠がありません」


それはそうだ。

テトラがないと言ったら、証拠はないのだ。


「ないわね。でも、こんなことができる人は限られている」


と、テトラのほうを見るがテトラはにっこり笑って返すだけで何も言わない。


「それはあくまでも状況証拠だ」

「やっぱり、難しいわね。こっち方面で、あなたを落とすのは。普通に行きましょうか」

「情報屋としての私との商売でどう?あなたたちの知識とは鮮度が違うわよ」


情報屋は自分という情報ですら、取引の材料に過ぎない。


「どのランクまで?」


この情報屋は相手によって取引できる情報が違う。

ランクはS>A>B>Cの順となっているらしい。

Cは一般のギルドの人にも教えるようなレベル。

Bはギルド上位の人が取引できるようなレベル。

Aは国の闇などのやばいレベルの情報だ。

Sは聞けばほとんどの情報を取引できる。


「抜け目がないわね。Aでどう?」

「では、こちらからは、500kgまでの制限解除でどうだ、ただし80種類までしか入らないが」


ヨタも出し惜しみをするつもりはないらしい。

1tはさすがに無理だろう。

シエラさんも口では難しいと言っておきながら、目が違う。

出し惜しみすれば、この状況をひっくり返されるだろう。


「えぇ、50倍の重さが使えるようになるなら、微々たるものよ」

「では?」

「商談成立ね。無理言ったお詫びにと言ったらあれだけど、王のほうにも話を通しておくわ」

「助かる。報酬は5人に分割して配分しといてくれ」


と、ヨタが言い、ギルドから出ていく。


「では、また、来ます」

「テトラちゃんは、ほどほどにね?」

「うん。ありがとう」


と、僕たちも外に出ると先生が待っていた。


「どうしたんですか?」

「ふふふふふふふふっ、それはこっちのセリフだと思わないのかな?」

「これは…ね、テトラ」

「うん…かなり、やばいね」

「特別室で3人が待っているわよ」


こうなったらもう逃げることはできない。

おとなしくついていくことにした。


僕は隠し事をしている。

それと同じようにテトラもゼプトもヨタもみんな。


さっきの宝珠の存在は先生はしらない。



先生の小一時間の説教は続き、今は談話室の個室にいる。


「疲れた」

「だな」


返してきたのはゼプトだけでほかの三人からは返事が返ってこない。

まぁ、アトはずっと無口だからどうしたのかわからないんだけどね。


「ねぇ、アト」

「………………」

「君はどうしたい?」

「………………」

「困ったな。テトラ、PMDを駆使してやっちゃって。僕らは外に出ているから」

「了解。ムフフっ!」


ちょっと暴走寸前のテトラを残して、僕たちは外に出る。


「アトちゃ~ん!」

「……………」

「そっちがその気なら。えいっ!」

「ひゃっ!何?えっ!やめて!きゃーーーー!」


「「「…………」」」


僕たちは顔を見合わせる。


「もう少し離れていようか」

「そうだな」

「近所迷惑だろうからね。『沈黙の壁』」


中から聞こえていた声や物音が聞こえなくなる。


「これなら聞こえないし、いろいろと安全だね」


この結論は少し間違っていた。


突然、あられもない姿のアトが扉を開けてこっちへ突っ込んできたのだ。

位置的にゼプトが接触するはずだったのに、気配だけ察知したのか後ろも見ずにかわしたためアトが僕に突っ込んでくる。

完全に予想外の展開に避けることもできず、吹き飛ばされた。


一瞬、意識がとびかけたが、何とかこらえる。


「重い」


柔らかい女の子の体を感じながらも純粋にどいてほしいと思っている。


「あぁ~!何やってるの、アトちゃんは!私もやるんだから」


開いた扉からテトラが出てきてこちらに走ってくる。


「げほっ!無理…だ……よ」


勢いよく飛び乗った、テトラのせいで強く頭を打ち……昏倒した。


しばらくしてから起きると、談話室のソファーで寝ていた。


「起きた?」

「うん。でも、まだ頭が痛い」


起き上がって確認するとみんながいた。


「アトちゃんが突っ込むからだよ」

「済まない」


バツの悪そうな顔をして、アトが謝ってくる。


「いや、最後のテトラが突っ込んできたのが問題でしょ」


追及する僕から微妙に目線をそらすテトラ。


「テトラ、こういうときは?」

「わ、わたしは関係…「週末のお菓子は僕には関係ないよね」…ごめんなさい」


「さてと、でアトはどうするんだ?ノナンの言うように覚悟がないとこれから先、困ることになるぞ」

「わ、わたしは……。強くありたいと思う」

「なぜ?」


ヨタが理由を問う。


「わたしは、王位継承権は第3位。簡単に言うと滅多なことがなければ、王位を継ぐことはない。そして、わたしは考えることが苦手だ。まぁ、王族の教育を受けてきた身として、それなりに知識はあると自負はしているが、いざとなるとそれを使うよりも先に体が動いてしまう。そんなわたしは考え続けなければならない政務もできず、忍耐が要るであろう近衛もできず、兄上や姉上のひいては民のための力になることはできない。だから、わたしは強さがほしい」

「いいんじゃないの?でも、なぜここにきたの?ほかにも道はあったでしょうに」


テトラが言うのも正しい。

別に強さを求めるなら、剣を取るだけでいい、書を読めだけでいい、優しくあるだけでいい。


「同じ年のやつが何を考えて何を求めているのかが知りたかったからだな」

「この年代のやつらだって特に何も考えていないさ。ただ、昨日のこと、今日のこと、明日のこと、なるようになると思っているだけさ」

「僕もアトは考えすぎだと思うよ。自分がやりたいことをやる、それだけでいいと思うな」


ゼプトの言葉に便乗する。


「ところで、アトは学院にずっといるの?」


ヨタが思い出したように言う。


「わからない。今のところ何もない限りはな。一応、編入生だ。それに父上にも釘は刺しといたしな」

「ちなみになんて?」

「もし、強引につれて帰るようなことがあれば、家出すると」

「「「「…………王様が不憫」」」」


「さて、アトの問題も片付いたことだし、自分の能力ついて説明していこうか」


僕は努めて明るく言う。


「そうだな、このままいくとアトを含めてカルテットからクインテットになるだろうしな」

「なぜだ?わたしがほかの人のチームに入ることがあるかもしれないだろ」


一呼吸おいてからみんなが口々に言う。


「ないと思う」

「ないな」

「ないわね」

「どうしてあると思うんだい?」


上から順に僕、ゼプト、テトラ、そして最後にヨタだ。

ヨタが一番ひどいこと言ってる気がするのは僕だけかな?


「みんな恐れ多くて入れるのは厳しいと思うのよね」

「それに、俺たちのところに一度入っちまったしな」


テトラとゼプトが言っているのは真実になるだろう。


「さっきの話に戻そうか。僕たち以外には秘密だよ。もちろん先生にもね。王とシエラさんは知ってるかもしれないけどね。僕の力はこれ、ミストルティン」


と、宝珠を見せて説明する。


「大したことは(魔術では)できないけどね。次、テトラね」


質問を許さず、テトラにバトンタッチ。


「私はね。……神級魔術が使えるの」

「…………!? 使えるものはいないというあれのことか」


僕の秘密を追究されないように、テトラを使ってごまかす。


「そうよ。まぁ、大した事ないわ」


テトラもある種、孤独だ。

ほかに神級魔術を使えるやつはいない。

演算量が膨大すぎて、頭が追いつかないからだ。

そういう意味で、テトラのハッキング能力はその副産物といえる。

そして、テトラが僕に近づいてくるのは、孤独という点で同類だからなのかもしれない。


「次はどっちがいく?」


ヨタがゼプトのほうを見る。


「じゃ、俺が先に行こうか。俺の力は超級魔術が使える。テトラには見劣りするってことだ。あとは、全ての武器が使えるといったところか」

「全ての武器が使える?」

「俺はどの武術も師範の称号を持っている。まぁ、ノナンの弓には勝てないんだがな」

「僕の存在意義のためにもやめて、それからね、ゼプトは近衛に誘われるレベルなんだ」

「…………!?なんか驚かされてばかりだな。近衛か。で、ヨタは最後にどう驚かしてくれるんだ?」


どうやら、僕が気絶している間に挨拶のさわりだけでもしたらしい。

お互いの名前は把握したというところだろうか。


「最後なのに特にすごいって言うわけでもないんだけどね」

「十分すごいと思うよ」


その内容を知っている僕はそう言う。


「ありがとう。えっとね、僕は魔術をいじることができるんだ。詳しく言うとその魔術の発動前なら、触れることで術式に干渉し改ざんできる。相手の攻撃で自爆させることも、敵の回復で自分を癒すこともできる。触れるっていう条件がいるけどね。後はその能力の副作用かはたまたこちらがメインなのか僕は隠してある術式でも見ることができる。こんなところかな。ところで、アトはどうなんだい?」

「わたしか?わたしはな……何かあったかな?……そうだ!上級までの魔術を武器で壊すことができる。そして、壊した魔術を相手に返すことができるといったところかな」


「……十分すごいと思うよ。超級なんて使ってくる人はいないからね。でも…」


次に僕が何を言いたいかはわかっているらしい。


「そう、魔術を使ってこない相手にはほとんど無意味だ」


と、能力の自己紹介を終える。

能力はほとんどの人が持っていない。

その中で、この集まり方は異常だろう。


-運命っていうやつを時々信じてみたくなるよ-


僕たちは談話室を後にした。



読んでくださりありがとうございました。

アトがとても雑魚いように見えますが、かなりの実力者です。

多分、ランクはBBB位かなと。


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