河童の雨玉
ころころ
ころころ
手の中で 転がしながら
河童が雨玉を作る。
ころころ
ころころ
雨水が
まあるいまあるい 雨玉になる。
誰かが
「雨玉 ひとつ 下さいな」
「約束を守ってくれたら分けてあげてもいいよ」
「約束って?」
「ひとつ
誰も見ていないところで
雨玉を割らないと雨は降らない」
「ふたつ
河童に雨玉を貰ったことを言ってはいけない」
「約束が出来るなら分けてあげる」
「はい。」
今日も
ころころ
ころころ
手の中で 転がしながら
河童が雨玉を作る。
ころころ
ころころ
雨水が
まあるいまあるい 雨玉になる。
誰かが
「雨玉 ひとつ ちょうだい」
「約束を守ってくれたら分けてあげてもいいよ」
「約束ってなに?」
「ひとつ
誰も見ていないところで
雨玉を割らないと雨は降らない」
「ふたつ
河童に雨玉を貰ったことを言ってはいけない」
「約束が出来るなら分けてあげる」
「わかった。」
その子は
約束をやぶった。
「ねえねえ聞いて。
河童に雨玉をもらったんだ」
友だちは言う。
「見せてよ」
その子は
雨玉を取り出した。
まあるい
まあるい
雨玉。
「ほらね」
ぱりん。
みんなの前で
雨玉を割った。
けれど――
雨は
降らなかった。
みんなは笑った。
「やっぱりうそだ」
その子は
ひとりで川へ行った。
河童は
いつものように
雨玉を転がしていた。
ころころ
ころころ
その子は言った。
「ごめんなさい」
河童は
少しだけ手を止めた。
それから
静かに言った。
「約束をやぶった子はね」
ころころ
ころころ
「もう
雨玉はもらえない」
ころころ
ころころ
「だから――
作るほうになるんだよ」
その子は
首をかしげた。
そのとき
頭のてっぺんに
ぽちゃん。
冷たい水が
たまった。
手のひらを見ると
水が集まり
まあるい
まあるい
雨玉になっていた。
ころころ
ころころ
それからというもの
川のほとりには
河童が二人いる。
ころころ
ころころ
今日も
手の中で転がしながら
雨玉を
作っている。
おしまい。
お読みいただき、ありがとうございます。
「河童の雨玉」は、雨の日にふと思いついた、
小さな昔話のようなお話です。
河童が雨を降らせるために、雨水をころころ転がして「雨玉」を作っていたら面白いな。
そんなところから、このお話が生まれました。
約束を破った子は、雨玉をもらえなくなりました。
でも、河童はその子を追い払うのではなく、
「だから――作るほうになるんだよ」と言います。
罰なのか。
それとも、河童からの仲間入りなのか。
その答えは、読む人に委ねたいと思います。
今日もどこかで雨が降ったら、
川のほとりで「ころころ、ころころ」と、
雨玉を作っている河童がいるかもしれません。
そして、もしかすると――
河童はもう、一人ではないのかもしれませんね。
最後までお読みいただき、
本当にありがとうございました。




