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『ふたりだけの世界』  作者: mugomui
0章 ようこそ、傍観者殿
1/3

#0 プロローグ

 意識(いしき)がはっきりとしない。視界には白色が入ってくるだけだった。

目の前に何かがある気がする。 がそれを認知できない。

しかし私の体は、目の前のモノを理解しているようだ。

ただ自分の体が動いていき、その「扉」を開けた。



 扉を通り過ぎ、目を開けるとそこは部屋だった。

壁一面は白く、床は木でできているようだ。

振り返って見ると後ろの扉も木の板一枚でできたものだったようだ。

ただ、気付くと勝手に閉まっており、もうノブは回らないようだ。

照明がないのにも関わらず、部屋は不思議と明るく感じる。

部屋にはベッドとソファがある。

ソファは3人ほどかけれそうな大きさで、ベッドは無駄に大きく2人は余裕で寝られそうな大きさだ。

とりあえずソファに腰をかけた。この部屋はやけに居心地をよく感じる。



・・・ここで冷静になった。そもそもここは?

思考を開始すると同時に思考がとぎれる。後ろの扉が開いた音によって。

「どうも。こんにちは?」

男か女かもわからない声で何かが話しかけてきている。

その姿は人型?の黄味(きみ)がかった白い(もや)である。

扉が開いた形跡はないがそれどころではない。

「どうも……あなたは?」

ここで初めて気づく。喉から出た声は記憶にない声だった。

人型の(もや)よりは少し低い声であった。

内心パニックになっていると少し考え込んでいた人型が口を開く。


「…傍観者(ぼうかんしゃ)?第三者?そんなところじゃないかな。決まった呼び名はないよー。」


なぜ靄なのに口を認識(にんしき)できたのだろうか。

その違和感はともかくこの人?は「傍観者(ぼうかんしゃ)」と言った。

しかしまだ疑問が浮かぶ。

「失礼ですがあなたの姿は…?えっと…」

言い淀んでいると靄がにこやかにこう返す。

「君の思い(えが)く姿は?」


そういうと靄が晴れていく。

黒いロングヘア、茶色い瞳、水色のTシャツと黒いスカート、白い靴下が出てきた。

肌は比較的白い肌色で、背丈は150程度だろうか。

「おぉ…」という声が思わず漏れる。

「どうだい?僕の見た目は。」

さっきよりも高い、女性の声で質問される。

声の違和感(いわかん)に驚きながら見たままを説明する。


「ふーん、そんな感じなんだー。...ところでさ、君は…“何者(なにもの)”?」


軽く笑いながら質問が投げかけられた。

・・・答えられない。名前が出てこない。

年齢も、性別すら。思考がうまく働かない。

「一応、人間(にんげん)ではありそうだね?」

「僕の姿は、人間の形みたいだし…この”君の空間”も人間の生活空間に類似している。」

そう耳にして、改めて人間(にんげん)であることを実感した。

正しくは人間(にんげん)だっただろうか。

自分の腕も体も、(もや)としてでしか視覚(しかく)で認識できない。

触覚(しょっかく)ではそこにあるのはわかる。

意識すると人の手の形には変形しているようで、不思議な感覚だ。


聞き流していた言葉に違和感を覚える

「わたしの空間…?」

ここはどこなのか聞こうと思っていた手前(てまえ)、この言葉に疑問が湧いた。


「そうだよ。君が作った空間だ。この部屋は君の思い描いたものになっているはずだよ?だってこの場所は”そういう場所”だからね。君が対話を望んでいたから、僕らは最初から会話ができている。動物みたいな奴とかなら“この場所”に来てもこうならないことが多いんだよね。」


「“この場所”っていうのは?」


「んー難しいこと聞くねー、具体的に言うとしたら僕が移動できる範囲で外からの影響がある場所だよ。たまに何かが迷い込んでくる場所。そして訪れた何者かによってその空間は創り上げられる。最初は何もない真っさらな場所なんだけどねー。」


「って言っても君は難しく考えすぎだよー!僕は「傍観者(ぼうかんしゃ)」で君は「人間(にんげん)」。この場所は君が作り上げた空間で君の思い描いたもの。これ以上何を考えるのさ?」


正直しっくりこないが、妙に落ち着く部屋、最初の扉を開けるような記憶、この部屋を作ったのが自分ならすべてに納得がいく。

だけれど、まだ疑問は尽きない。

どうやって来たのか。何をすればいいのか。

と言っても自分の過去の記憶はおそらく一切ない。思い浮かばないのだ。

つまりどうやってここに来たのか一切わからない。

…たいして興味もないけれど。


「私は何をすればいいんですか?」


扉も自分で開けられないから、心地のいいこの部屋にいる事以外やることがない。

だからこの部屋以外について知っていそうな「傍観者」に聞いてみた。


「何もないんじゃない?好きな事してればー?」


・・・適当な返事が返ってきた。

途中から割と適当な感じになってきているとは思っていた。


「そういえば、なんであなたは”私の空間”に?」

「なんか新しいのがあったから来てみたんだよね。」


そんなカジュアルな感じなのかと思った。


「私の空間?はそんなに目立つんですか?」

「まぁ僕の行動範囲の内側だからね。この部屋ができたのが」


確かに自分の行動範囲に新しいものが増えていたら気にもなるか。


「君はやけにいろいろな質問をするね。考えるのが好きなの?」

「考えるもの嫌いじゃないですけど、強いて言うなら…好奇心ですかね?」


我ながら少しずれた回答をしてしまったと思った。


「うんうん。いいじゃん!」

傍観者(ぼうかんしゃ)」の目の色が変わった。

同族を見つけたといわんばかりにソファに近づき、腰を掛けて私に近づいてきた。


「それじゃあ僕の”遊び”を一緒にやってみようか!…「人間(にんげん)」君。」

「…遊び?」




―――これは「傍観者(ぼうかんしゃ)」と「人間(にんげん)」が“遊び”を重ねるだけの物語―――


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