表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

第5話:夜明けに響く囁き

王宮の深部――

薄暗い廊下を二人は進む。

ミナ・ルミナは手にした杖をしっかりと握り、瓶の光を微かに揺らす。

音錬――音で魔術を操る力は、今、彼女にとって最大の武器だった。


「ここまで来るとは思わなかったな……」

ルクス・エルダは低い声で呟き、剣を手に慎重に歩く。


廊下の先に現れたのは、巨大な扉。

古代文字が彫り込まれ、微かな光を発している。

「ここが……黒幕の居場所か」

ルクスが息を詰める。


ミナは杖を軽く叩き、音錬を展開する。

微細な振動が壁や床を伝い、封印された魔法の反応を指し示す――

「この音……封印の奥に、人の気配がある」


扉を押し開けると、そこには王宮の高官であり、学者失踪事件の黒幕――ヴェルディス卿が立っていた。

「やっと来たか、音錬の少女」

冷たい笑みが廊下に響く。


ルクスが剣を構える。

「卿、これ以上の悪事は許さない」


ミナは静かに杖を握り直す。

言葉はない。だが、音が語る。

瓶の中の光が震え、音が空間に広がる――

それは、古代詠唱「ある夜明けに語る」の核心を呼び覚ます音だった。


ヴェルディス卿の表情が一瞬変わる。

「まさか……音錬で封印が解けるとは……!」


ミナは杖を振り、音を精密に操る。

古代魔術の封印が解かれ、書庫の奥から行方不明の学者たちの消息を示す幻影が現れる。

彼らは生きていた。

だが、力を封じられ、動けなくなっていただけだ。


ルクスは驚きと安堵を混ぜた表情でミナを見る。

「君がいなければ……本当に救えなかった」


ミナは文字を書き、答える。

『……声はなくても、私は戦える』


ヴェルディス卿は最後の抵抗を試みるが、二人の連携と音錬の力により、封印は完全に解除される。

静寂の中、学者たちはゆっくりと目を覚まし、王宮の陰謀は終息へと向かう。


廊下を出たミナとルクス。

朝日が差し込み、王宮の石壁を柔らかく照らす。

「夜明けが来たな」

ルクスの声に、ミナは微笑む。


声はない。

だが、音は確かに世界に届いた――希望として、勇気として。


ミナ・ルミナの戦いは、まだ続く。

けれど、夜明けに、彼女の音は世界を変えたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ