1/7
あの日をはさむ、五つの記憶。
十歳の誕生日。
それは、王女アリシアにとって、ちょっと特別な一日でした。
白い髪飾りを贈られた朝。
家族と囲む、にぎやかな食卓。
これまで使われていなかった扉が開き、
新しい部屋と、新しい暮らしが始まります。
ちょっとだけ背伸びして。
でもまだ、子どものままでいたい気持ちもあって。
そんな“はざま”に揺れる、五つの小さなできごと。
誰かとの距離が近づいて、
誰かがそっと背中を押してくれて、
そして、気づかないうちに心が動いていた──
これは、そんな“あの日”をはさんだ、小さな断章たちです。