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第5話

第4話末尾に加筆を行いました。

その続きからとなります

「はい、どうしましたか?」


「緊急事態だ。ポイントK-7に向かってくれ」


先ほどまでビルを赤く染めていた日は落ち、空気はしんと冷たさを増した気がした。


「ーーー了解しました。シラビ、飛ばすぞ!」


『はいな!』


「通話はこのままに。チームチャットに切り替える」


切り替え音が鳴り、回線がつながる。

視界の一部に公安局の作戦室の様子が表示された。

こちらに気付いた人物が振り返って手を振る。


「あ、湊ぉ!おつーーっ!」


「ちょっと蓮! 御縁さんが今から説明しようとしてるのよ!」


「挨拶ぐらいいいだろ? 湊は今日は休みなんだぞ!」


「そのくらい知ってるわよ! だけど…!」


「ゴホン。諸君、慎んでくれ」


画面越しの作戦室はなにやら騒がしい様子だったが、御縁さんの一言で一応の沈黙が保たれた。


「湊にも繋がったことだし、説明するぞ。こんな体だが、結構な緊急事態だ」


「本件は、ブラックリストに該当する」


「!!」


真島の顔が、見ていて面白いぐらいに驚愕に染まる。

一方蓮はーーーー、


「とりあえず驚いてみたって顔ね?蓮君?」


そう言って、画面越しの部屋に入ってきたのは、黒色の髪をボブカットに切り揃えた美女。

ネイビーのスーツをびしっと着こなしたその姿は、しごでき女性保安官のオーラを放っていた。


「黒瀬先輩!」


「やっほー! みんな今日はよろしくね? 誠君も」


黄色い声を上げる真島。


誠君とはーーー御縁さんの名前だったか。確かあの二人は同期だ。下の名前で呼び合っている感じなんだろうか。

湊の邪推をよそに、黒瀬先輩は蓮の方に向き直る。


「ブラックリストはね? 我が国のマキナ・アイを含む、各国のAIで構成された国際平和評議会が定めた、排除優先リストの第2ランクのこと。排除準備対象に該当する事案よ?」


ブラックリストーー。


湊も学校で習ったことがある。AIで構成される国際平和評議会は、その直下に平和維持軍と呼ばれる、自動兵器群を有している。


人類は自らの愚かさを悟り、恒久的な平和を人工知能にゆだねた。

それすなわち、人類の敵とみなされた場合、評議会が率いる自動兵器群、その全力をもって抹消されるのだ。


コード・ホワイト。その指令が下った瞬間、対象やその地域、あるいは国自体がこの世から消えうる。

その『準備』がされているということはーーー、


「やべーじゃねーか!」


テーブルを叩く蓮。


事の重大さが共有されたところで、御縁さんが説明を再開した。


「本件における我々の任務は『制圧』。対象は『なんらか』の爆発物を積載したと思われる回転翼機だ。これを見てくれ」


テーブルの上に画面がポップアップされ、動画が流れ始める。

沿岸監視カメラの映像だろうか。


一隻のタンカーが停泊している。その横をヘリが通り過ぎて…


突如、タンカーが爆発した。


「うそ…」


船体が損傷を受けたのだろうか。そのままゆっくりと傾き始める。


ヘリはどこかに飛び去って行った。


「見ての通り、マキナ・アイの監視システムは、港湾区画への侵入に気づいたものの、この事態を防げなかった」


「このヘリが未登録機だったということすか?」


ヘリ通過の部分を何度も再生しながら、蓮が問う。


「そうだ。外観、形状からして当該機は製造された『記録』がない。マキナ・アイによる制御が行使できない」


「つまり、止められない…」


ポツリと真島が呟く。


本来、というか原則的に、あらゆる交通システム、インフラにはマキナ・アイの統制権限が織り込まれている。


したがって、すべての機械はマキナ・アイが健全である限り安全であり、例え不測の事態が起こっても必ず抑止出来るのだ。


逆説的に、止まらない機械が有るとすれば、それはマキナ・アイが預かり知らぬ、未知の機械である。


誰かが、人知れずに作ったーーー。


「分析によると、当該機には搭乗者が1名」


この情勢下で、ヘリコプター1機をマキナ・アイを欺き手に入れるのは、至難の技だ。


その者は、行末に何を見ているのか。


「進路方向は首都中心区画。つまり、ここだ」


「「「ここ!?!」」」


皆の声が一斉に被る。


「犯行声明もある。読み上げる」


「ーーこの都市は、国際社会は、機械生命体に支配されてしまった。もはや人類は地上の支配者ではなく、機械の奴隷である。

ここに、愚鈍なる人類と敵で有る機械生命を葬り去るべく、秩序を再定義する。

同志よ、我に続け。使命が全うされるまで、破壊の限りをーーー


以上だ」


「要求はーー、マキナ・アイの完全停止といったところすかね」


「おそらくそうだろう。明白ではないが…こういう輩はどこにでもいる」


「一般人には広まっているのかしら?」


「この声明は、ある周波数帯で常に発信され続けている。拾えれば、誰でもわかるだろう」


「なるほどね」


遅かれ早かれ誰かから拡散されるだろう。

不用意な混乱は避けたいところだが、そこへの対処は、警察などの管轄。

公安局の任務は別のところにあった。


「制圧作戦について説明する。最も重要な点は、敵の武装が不明な点だ」


「バグ・ドローンは?」


「無論、探索済みだが、爆弾の種別特定は失敗した。当該機ーー以後目標と呼称するが、目標内部の構造については取得ができた。戦術リンクにアップロード済みなので、各自確認しておくように」


「話しがそれたが、敵武装が不明である点、重々注意してくれ。最悪の場合ーー」


『最悪の場合、核攻撃もあり得るということでしょうか?』


「その通りだ、湊」


「「!!」」


「爆弾の種別の特定に失敗したということは、その可能性もあるということだ。我々が想定する最悪のシナリオは、首都中枢、マキナ・アイのメインターミナルへの熱核攻撃だ」


真島がふるふると手を挙げる。


「先輩、ではもし失敗したら…」


「真島、あくまでも最悪の想定だ。多くの場合、そうでない可能性が高い」


「でも、ゼロでは無いんですよね…」


「その通りだ」


「だったら…」


何かを言いたげな真島を遮って、御縁先輩が続ける。


「ーーだから、今回は万全を期すために助っ人に来ていただいた。前置きが長くなってしまって、申し訳ない。

帝邦グループ、次世代コンピュータシステムの宮水さんだ」


そう告げると、ボイスチャットから知らない声が流れてくる。女性だ。SOUND ONLYで顔は分からない。


「ご紹介に預かりました。帝邦グループの宮水です。マキナ・アイーー監視ユニットの管理主担当をしています」


「というわけだ。彼女にはマキナ・アイのシステムを利用して目標の出所や犯人の足取りを捜査してもらうーーー真島!それと」


「私ね?」


黒瀬先輩が真島の肩に両手を置く。

真島は予期せぬ出来ごとだったのか、ひゃっと変な声を出していた。


「そうだ。二人には宮水さんからの情報に従い調査に出向いてもらう。そして得られた情報を元に、蓮そして悪いが湊、敵の制圧を頼む」


「「了解」」


「ざっとチーム編成はこんなところだ。何か質問は?」


真島が首を振る。蓮はバックパックを整理し始めた。


「無さそうだな。全員戦術リンクとチームチャットに接続のこと。詳細は追って連絡をする。では、各自散開!」


いうや否や、みんな一斉に立ち上がる。真島はロッカールームへ。

蓮はそのまま合流地点に行くつもりだろうか。発着ポートへ。

黒瀬先輩は何やら御縁先輩と話していた。


俺もはやく指定の場所に向かうとしよう。









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