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第9話 婚約者?

隣の洋品店で、VIPルームに通されて、出てきたときには侍女ではなく、普通の令嬢。夏用のドレスを買ってもらった。髪までセットしなおして、化粧まで直してもらった。


小切手って…凄いわね。使ったことないけど。


先ほどの宝石店の店員さんは、にっこり笑って私の指のサイズを測った。さすが、プロだわね。動揺を隠すのが上手。洋品店も、口が堅いらしい。


「婚約者に侍女の格好をさせて連れ歩いていたなんて、それこそいい噂話になるぞ!変な趣味持ちだと思われたらどうする?」


変な趣味?って?


予約してあったレストランは個室。

人数の変更は、二つ返事だった。アークラ伯爵家って…。


「宝石店はどうだった?」

「ええ、店員の皆様の手袋がとても綺麗でしたね。」

「・・・・・」


さりげなく係りの人が椅子を引いてくれた。


「それで?」

「な、何がでございますか?」

「お前、何も聞いてなかったのか?」

「何が?でございますか?」

「婚約の件。」

「はあ。初耳でございますが?真でございますか?」

「普通に話せ。」


給仕係がワインと前菜を運んできてくれた。レイノは冷たいお水。


「お前が16歳になったら婚約だ。学院を卒業次第、結婚するから、ちゃんと卒業しろ。」

「・・・・・」


そこ?


「でも、先生には、ルビーの彼女がいるでしょう?あれは絶対に私のじゃないでしょう??」

「アウリス、な。あれは妹の誕生日のプレゼントだ。」

「妹さんて…。」

「今度、9歳になる。」


え?9歳に?あの石??


「先生、私に嘘を言っても仕方ないでしょう?その方と幸せになって下さい。」

「アウリス、だ。嘘じゃない。似合うんだな、赤。うちのユーリは。」


シスコン??いやあ、ないな。


「大体、お前と婚約でもしなきゃ、家に乗り込んだりしないだろう?気が付け。」

「いえ、乗っ取りかと思いました。」

「は?」

「ほら、弟を洗脳して…。」

「・・・・・」


レイノは慣れたのか、二人で言い合っていても動じなくなっている。黙々と前菜を食べている。


「お前に変な噂があったから、観察させてもらっていた。」

「は?」

「いやな、掃除メイドがお前の書き損じた手紙だといろいろ拾ってきては見せてくれてな?」

「はい?」

「吟遊詩人と旅に出たいだの、勇者がいいだの、執事と禁断の恋だの…最近では10歳年上がいいだの…。とんだ遊び人かと思ったぞ。」

「え?」


いつから?いったい?

お掃除メイド????

書き損じの妄想小説と、リーサたちに言われて、告白場面を見直したりした…あれ?


「そいつ、どうも、零落した男爵家の娘だったらしくてな。お前より私を選んで欲しいと俺の寝床に転がっていた。」

「は?」

「もちろん、すぐに首にした。」

「・・・・・」


春から新しく入った子かしら?


「で、どうなんだ?やはり10歳上がいいのか?俺はお前の6歳上になるが。」

「いや、それは…。」


なんか、なにその口元だけの笑み…。

そして…手を握るのは止めて、と思ったら、


「ふふっ、お前のこのペンだこ、凄いな?」


ちょうどいいタイミングで、お魚料理が来た。舌平目のムニエル。美味しそう!!


「それとも、3つ下か?レイノの同級生だろう?銀髪に菫色の瞳?」

「あ、あれは…。」


「使用人の分際で、この私に愛を告げるなんて!あたり、驚いたが?お前の家の執事は60過ぎだろう?年が離れすぎている気がするが、そのくらい上が好みなのか?あ?」

「そ、それは…。」

「それは?」


「とりあえず、お魚を食べませんか?」


ムニエルが私を待っている。レイノはもう食べ始めているし。

あれ?じゃあ、レイノは私の婚約を知っていたってことかしら??


手を振りほどいて、黙々とムニエルを食べる。美味しいわ!!

口に入ったとたんに、とろけそう!


チラリと横に座った先生を見て見ると、上品に食べている。

金髪にグリーンの瞳。綺麗なグリーンね、いままで気が付かなかったなあ。


そうかあ、この人、好きな人がいるのに、商売のために私と婚約するのか…。

いや、ルビーの人は愛人にするのか?

そうよね…そうして別宅で暮らすのよね?愛する人と。で、貴族社会の婚姻なんてそんなものだ。愛しているのはお前だけだ!


「何を見とれてるんだ?」


ひえっ、


「見とれてなんかいません!少し、考え事を。ほほほっ。」


「何を考えていたのか、言ってみろ。」

「・・・・・」

「さあ、言え。」


いてててて、ほっぺを引っ張るのは反則です。


「あのですね、先生は、先生の商売のために私と結婚するんでしょう?仕方なく。で、ルビーの女の人は愛人?その方と別宅で暮らして…。貴族社会の結婚なんてそんなもんだ。俺が愛しているのはお前だけだ、とか言うんだろうなあ…。って、考えていましたけど?」

「・・・・は?」


「正直に言ったわよ。どうよ?そんな感じでしょう?私は自分の自由さえ、好きなことをやる時間さえあれば、お飾りの妻でも構わなくてよ?」


理解のある私って都合がいいでしょう?


「お前って…。」

「な、なによ?」

「面白いな。やっぱり。」


は?


思わず先生を睨みつけると、飲みかけた白ワインを吹き出しそうになったらしく、顔を背けて笑っている。失礼な男よね。初めて見た笑い顔が…ここかよ?


「先生、すみません。姉は昔からどうも妄想癖がありまして。」


レイノ??







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