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第13話 誕生日。

今日は私のお誕生日。

いつもの二人からはお昼休みに色とりどりのガラスペンと分厚いノートを貰った!嬉しい!何よりもうれしいわ!!


「最近スランプか?新作はまだか?」

「・・・政略結婚して幸せエンドのお話が中々書けなくて…。」

「ティーナ?自分のことだと思うからでしょう?あなたの初めての三次元の事件ですものね?うふふっ。」

「・・・事件?」

「そうよ。大事件よね。あなたがどう思っているのかはよくわからないけど、あなたの婚約者、見目麗しくて文武両道。家は資産家。面倒見もいいわけでしょう?今まで浮いた噂もない。どちらかと言えば、女嫌い、って言われてたみたいよ?」

「そうだぞ。弟さんもなついているんだろう?父親も頼りにしているみたいだし。それで、何が不満だ?」

「みんなの前で、あーん、しちゃうくらい仲いいじゃない?」

「へ?だ、だ、だって、弟にもするし。」

「その辺かな。」

「その辺よね?」

「な…?」


二人はニヤニヤしながらお茶を飲んでいる。

10月も半ばになると、少しづつ学院の中庭の木々も色付いてくる。

そうそう、食べ物もおいしくなるし。昨日はライラにリンゴを貰った。婚約さんがたくさん送ってきたらしい。美味しいりんごだったなあ。貰って帰ってみんなで食べた。


「今日は領地からお父様も見えるんでしょう?」

「いよいよだな。」

「うふふっ。そうですわね。」


な…?




*****


静かだな…。


実家の朝食風景を思い出してしまうほど静かだ。

カチッ、と小さく食器の触れる音。控えている使用人の吐息さえ聞こえない。

いや、これが普通だ。


昨晩の夕食は賑やかだった。まあ、いつも賑やかだけど。


父親と弟、使用人のみんなからお誕生日をお祝いされて、ティーナが頬を染めて喜んでいた。いつもの友達から何を貰ったんだとか、学院の中庭が紅葉し始めたんだとか、領地の何とかばあさんは元気かとか…。うるさい位だった。



これが…普通なんだ。



セットだけされた隣の空席を見る。


チラリとレイノを見ると、黙々と食事をしている。


はあああ…。俺?俺がそんなに悪い??



昨晩、食後にティーナに婚約指輪を渡した。

16歳になったら正式に、って説明だってしていた。


いつかレイノと選んだやつだ。俺の瞳と同じ色のエメラルドが埋め込まれている。

「あんまり大きな石だと、姉は遠慮してつけませんよ?」

レイノがそう言うから、小ぶりだけど色のいいものにした。サイズもちゃんと測ったし。


何が不満なんだ?家出するほど??






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