第12話 家族。
「お前はいつもいつもいつも…。空気を読め!」
「あ?あら、空気ね?わかりました先生。」
「本当に理解したのか?説教しているときに俺の口にクッキーを詰め込んだな?」
「美味しかったでしょう?」
「家族との晩餐の時も、突然俺の口にお前のデザートが突っ込まれた。」
「だって、みんなデザートが違ってるんですもの。先生のデザートも食べたかったんです。美味しかったですよね?」
「・・・そして今回はイチゴだ!!」
「季節外れのイチゴなんてどうなの?って思いましたが、凄く美味しかったですね!うふふっ。ありがとう。」
「・・・・・」
夕食後の勉強会は秋になっても続いていた。レイノの勉強机の脇に置いた私用の机はそのままだった。もちろん、夜のお茶も私が出している。
先生は通常営業。今日も怒っている?
「なぜだ?俺に理解できるように説明してみろ!!」
「なぜ?ですか?だって美味しいものはみんなで一緒に食べると美味しいから?弟にだってそうしますよ?ね、レイノ?」
「ええ…。でもお姉様、僕ももう大きいので、さすがに人前では恥ずかしいですよ。」
「まあ、そうなの?じゃあ…とりあえずお茶にしましょうか?」
先生も恥ずかしかったのかしら?
まあ、今度から気を付けましょう。
*****
足早に、逃げるようにお茶を出しに姉が部屋を出て行った。
・・・大方、めんどくさくなったんだろう。
「はあああ…。」
「なんか、すみません、先生。」
「いつもああなのか?お前の姉は。」
先生の大きなため息。ふふっ。先生、最近ずいぶん表情が豊かになりましたよね?
「前にも言いましたけど…母親が早くに亡くなったでしょう?父は忙しいし。みんなそろった時の食事は、それだけでご馳走でしたね。もちろん、美味しいものはみんなで分け合って食べましたよ。使用人も含めて。そんな感じです。」
「・・・・・」
「先生のことも、家族扱いなんですよ。姉の中では。」
「・・・家族?ねえ…。」
夜になると風が涼しくなる。
先生がなにやら考え込んでいるうちに、部屋の窓を閉める。




