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少年と2人の男





「起きなさい。」





誰だろう。


聞き覚えがあるようなないような。






「起きなさいって。」






ああ、あたたかい。


これは―――。




「おかあ―――」






「起きろってば!!」




視界が揺れる。


ものすごく強くゆすられているらしい。




「おい大丈夫か!?」



「あ、あれ?」



「なにがあれ?なんだ、なんでこんなとこで寝てんだ?大丈夫か?」


「まあ・・・傷はないっぽいな。」



このよくわからない状況に見つめる僕。



「ん?なにか顔についてるか?」



「男―――」



「どうみても俺は男だろうよ。」








その瞬間大きな衝撃音が響く。


森の奥の闇に光る目が見えた。



「やべえ!もうきた!」


「逃げるぞ!走れるか!?」



「だ、大丈夫」



よくわからないが、まずい状況なのはわかる。



「こっちに走れ!」



響く衝撃音が本能を刺激する。


体が勝手に動いていた。



「やべえ追いつかれる!ここは一発―――」



「―――ふせろ!」



反射的に体が動く。


いや驚いて転んだだけだった。ちょっと恥ずかしい。



何かが横から飛んできたような気がする。


すぐに森の中で大きな炸裂音がした。




―――鈍い地響きが収まったころに現れたのは男だった。









「無事か?」


なんとも感情がこもっていない台詞をはく男。



「無事なわけねえだろ!遅いだろ!おれ死んじゃってたかもしれないだろ!」



「おかしいな、確実なタイミングだと思ったが。」



怒っている男は一瞬納得したような顔をしたが、すぐさま顔が曇っていく。



「お前―――おれを囮にしたな?」



男は何も言わない。


恐ろしいほどに無表情だ。



「まあそ―――」



男がほとんど口を開いた瞬間にとびかかる。



「ハジメえええ!この人でなしがあああ!」


この男、泣いてないか。



「まて。」




ぴたりと止まる。

このハジメと呼ばれた男、大の男が泣きながら散々文句を言っても何も動じていない。




「ディーノ、この少年は?」




この泣きべそをかきながら殴りかかった残念な男はディーノというらしい。



「いや、途中の道で寝てたのよ。危ないから一緒に逃げてきた。」






「―――なるほど。少年、どこか不調はないか?巻き込んですまなかったな。」



ひどく事務的な物言いだが、おそらくこういう人なのだろう。



「大丈夫、ありがとう。」



ここでようやく心の余裕ができた僕は2人を見る。


最初に出会ったディーノと呼ばれた男。


背は僕より少し大きいくらい、整った顔立ちで透き通るような金髪。


清潔感もあるのだが、なにか妙な髪型や服装のせいなのか、態度のせいなのか。




―――みればみるほどに軽薄そうである。




「なんだよ、惚れたのか?」



裏切らない。





―――視線を移す。


次に出会ったハジメと呼ばれたこの男。


まず背が高い、というか細長い。


ディーノと同じく整った顔をしているが黒髪はボサボサ、無表情で何を考えているのかわからない怖さがある。


職業はわからないが医者や学者か、そんな感じだ。




「どうした、腹が減ったのか。」


―――天然なだけなのかもしれない。




じっと見つめる僕を不審に思ったのか、2人は目を合わせる。

どうやら仲は悪いわけではないらしい。








「それよりも少年。なんでこんなところにいた。」


「・・・わからない。」


本当にわからない。なにか頭のなかにモヤがかかったようで何も思い出せない。



「記憶が一時的にないことは珍しいことじゃないが。」


「困ったな、まあ「人間」だし森の国ってことはねえよな。」


「俺たちも王都に帰るから・・・ひとまず一緒に来てもらうのがいいだろうな。」


「そんじゃそうするか。」





「少年、名前は?わかるか?」


ディーノの声は心にすっと溶ける声色をしている。




僕は―――




「僕の名前は、―――カイト。」


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