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五話

 目が覚める。

 俺は真っ暗な地下室の中央で、金属製の椅子に鎖で固定されている。


「太陽くん、君は我々の貴重な教員を一人始末してしまった」

「教え子と融合したがる人でなしだぜ? 死んで当然だろ」


 瞬間、俺の体に電流が流れた。


「その電気椅子は海外で死刑に使われているものと同じ規格だ。我々はいつでも君を殺せるということを忘れないでくれたまえ」

「我々ってのは……具体的には誰だよ。この学校の教師どもか? それとも教育委員会か? はたまた魔導協会って可能性もあったりするか?」

「その全てを兼ねる存在……と思ってもらって構わないよ」


 俺は溜息を吐いた。

 どうやら面倒な奴らに目を付けられたようだ。


「俺のエルグレコはどこだ?」

「心配は無用だ。君の目の届かない場所に安全に管理しているよ。あれはどうやら何重にも因果を編んで作られたようだから、我々にも保有権を奪うことは出来なかったんだ。だから、保管している」

「だろうな」

「手放さないと殺すと言えばどうするかね」


 暗闇からの声に俺はハッと嗤う。


「さあね。どうすると思う?」


 瞬間、電流が流れる。

 俺は涎を垂らしながら暗闇を睨む。


「どうやら死んでも手放さないつもりらしいね」

「その通りだ」

「取引をしようじゃないか」

「取引だ?」

「悠久紗雪と越谷ヒナの身の安全を保証しよう。代わりに君にはエルグレコを手放してほしい」

「どうしてそこまでしてエルグレコを欲しがる」

「それに答える必要はない」

「お前……俺の先祖の関係者か?」


 電流が流れる。


「ビンゴだな。エルグレコに編まれた意思の中に何かお前にとって重要な情報が入ってるんだろ? それを解析するために俺からエルグレコを奪いたいってわけだ」

「……」

「つまり、お前は俺を殺せない……殺せばエルグレコの保有権は永遠に手に入らなくなるからだ……」

「それはどうかな」


 電流が走る。


「確かに彼の剣の因果は複雑怪奇だ。しかし時間をかければ解けないことはない。だが時間は大切だ。お互いに。だから、君と私の時間を節約しようと提案しているのだよ、私は。君はここで無駄な拷問を受けずに済む。私は必要な情報を最短で手に入れる。何も不都合はないだろう?」

「俺の名前が消える。不都合だ」

「現に君は名前のない状態で暮らしているじゃないか。このまま太陽として暮らせばいいだろう?」

「そういうワケにもいかないところが俺の人生の辛いとこだよな」

「……」

「今の沈黙はなんだ? 紗雪の事情を知ってれば今の言葉には何らかの反応があっても良かったと思うんだが?」


 俺はなんとなく相手の正体が分かってきた。


「なるほど、つまりお前は俺の先祖の関係者だが、それでいて俺と紗雪の事情を知らない人間ってワケだ」

「……」

「そうなると、お前の正体は……」


 俺はニヤリと笑い、暗闇のほうに視線を向けて言った。


「エルグレコを手放した、未来の俺だ」

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