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最終話『みんなのいる場所へ』

「小雪ちゃん! 小雪ちゃん……!!」


 重たい瞼を開けると、少女は泣きそうな顔で微笑んだ。


「良かった……! 私……私っ! 小雪ちゃんが死んじゃったと思って……!! もうあんな無茶絶対にしないで……!! ばか……!!」


 ぐすぐすと泣きじゃくる彼女に手を伸ばし、頬を伝う涙を拭う。


 私はあの瞬間、エルグレコの力を利用して魔王のコアを無力化し概念領域に突入した。光の空間の中で魔王と対話した私は、この世界の過去を、人類の業を、そしてそれに絶望した魔王の心を知った……。


「もう泣かないで、紗雪さん……私も紗雪さんに会いたくて、こうして戻って来たんだから……」


 それを聞いて、紗雪はぼろぼろと涙のしずくを落とす。


 魔王はこの世界を私たちに託すと言った。

 たった一人で全てを背負うことを辞め、私たち全員にこの世界の行く末を委ねると……。


 私は空を見上げた。


「私たちは弱い。たった一人じゃ何も出来ない、か弱い生き物です……。それでも、一人一人が力を合わせればどんな絶望にも負けない力を生み出せる。それは希望です。みんなが諦めずに前を向くことで、誰にも信じられないような新たな力を生み出すことが出来る……。人間はすばらしい生き物です……!」

「小雪ちゃん……」

「私は人間ではありませんが……でも……」


 紗雪は私のことを抱き締める。

 痛いくらいに、強く……。


「小雪ちゃんは誰よりも人間だよ……っ! 私が怖くて前に進めなくなった時、背中を押してくれた。悲しい時は優しく抱きしめてくれた……。それに、こうして皆のために頑張って……!!」

「そうですね……。人間かそうでないかなんて、些細な問題なのかもしれません……」


 雲の隙間から、光が射し込む。

 青い空が広がっていく。


「紗雪さん……帰りましょう。みんなのいる場所へ……」

「うん……! きっとみんな小雪ちゃんのこと待ちわびてるよ!!」


 私は彼女の肩を借りて立ち上がる。

 全身が痛い。でも、歩かなければ。


 みんなのいる場所へ……。


 ~Fin~

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