『罠-6』
昂平が愛美の面会を終え、自宅へ帰ると、アパートの前で、去年まで勤めていた佐藤板金の社長の佐藤が立っていた。
「……」と昂平は目礼した。
昂平と佐藤は昂平のアパートの部屋にいた。
昂平がマグカップに入った淹れたてのコーヒーを出した。
「ありがとう」と言って、佐藤がコーヒーを飲んだ。
そして、「温まる」としみじみと言った。
「……待ちました?」
「……いや」
「……」
「……昂平くん」
佐藤は昂平が会社に在籍時は、昂平の事を『昂平』と呼んでいたが、今日は呼び捨てではなく、くん付けだった。
「……すまない」
「……」
「本当にすまない」
「……」
「吉嶋が会社の金を持ち逃げした」
「……」
「借金が五百万くらいあったらしい」
「……」
「……去年のあの年末の事件も……きっと……」
「……」
「あいつの仕業に違いない」
「……」
「疑った事……信じてやれなかった事を許して欲しい」と佐藤が頭を下げる。
「……」
「お父さんじゃなかった……」
「……」
「お詫びのしようもない」
「……」
【謝らなくちゃいけないのは自分の方だ……真っ先に疑ってしまった……信じてあげられなかった……信じなくちゃいけない人を信じてあげられない……自分はやっぱり……ダメ人間だ……】




