『罠-2』
藤田の飛び降り自殺から既に一週間が過ぎようとしていたが、未だに藤田の意識は戻らないままだった。今日の夜も上村が病院に詰めていた。そんな時、桃が病院を訪れ、上村に差し入れを届けにやってきていた。
「何です、これ?」と桃が持ってきた差し入れの袋の中を上村が見てみる。
「ハンバーガーです」
「いい匂いだ」
「美味しいですよ」
「お腹ペコペコでした。じゃあ、遠慮なく」
「どうぞ」
「いただきます」と上村がハンバーガーを食べていく。
「本格的です」
「ふふっ」と桃が思わず笑って、
「そうですね。本格的です」と言い添える。
「でも、ちょっと食べ難いですね」
「こういうのは上品に食べたらダメですよ。大口を開けて、パクつくんです」と桃が豪快に食べるように勧める。
「顎、外れませんかね」と上村なりの豪快さで、ハンバーガーを食べる。
「食べ方はそれで合格です」
「ハンバーガーを食べるのも難しいんですね」
「美味しく食べるのが一番」と桃が笑みを浮かべる。
その時、護が藤田の見舞いにやってきた。
上村が慌てて、食べていたハンバーガーを無理やり頬張った為、かなり苦しそうにしていた。
それを見かねた桃が、
「これ、飲んで下さい」と飲み物を上村に渡し、
「まだ面会謝絶なんです」と護に向かい、少し申し訳なさそうに言った。
「まだ意識は……」と護が聞く。
「はい」と桃が答える。
「分かりました。また来ます」と頭を下げ、行こうとする。が、振り返り、
「しっかり噛んで」と上村に向かって、冗談ぽく言った。
上村は未だ、口の中のハンバーガーと格闘中であったが、何とかお辞儀だけは護に向かって出来たのであった。
「じゃあ、失礼します」と護が去っていく。
漸く、口の中のハンバーガーを退治し終えた上村が、
「死ぬかと思いました」と冷や汗を拭いながら、少し青ざめた表情で言った。
「慌てなくていいんですよ」と桃がさも子供を諭すかのような口調で言った。
「そうですね」と上村が少し照れくさそうに頭をかいた。
「……もう……」
「……」
「藤田の意識はこのまま回復しないんでしょうか?」
「……やっぱり」
「はい?」
「一つ仕掛けてみますか」
「何をです?」
「……罠を」
「罠!?」
「罠を張ったら、何がかかるのか……」
「……」
「一丁、実験してみますか?」
「……」と上村の言う罠がどんなものか、まだ想像すら出来ない桃であった。




