『復讐、そして、身代わり-5』
桃は昼過ぎの新幹線で東京に帰る事になっていた。
「すみません。直ぐに帰ります」と桃が携帯電話で話をしていた。相手は上村であった。
「テレビ、見れませんか?」と上村が言った。
「もう駅のホームです」
「今、テレビのニュースでやってますよ」
「何をですか?」
「そちらで起こった殺人事件の犯人が捕まったみたいです」
「生駒涼のですか!?」と桃が少し興奮して聞く。
「はい」
「……誰が!?」と一瞬だけ桃は昂平の顔が頭を過ぎった。
「生駒芽依の弟が……」
「……」
「警察署に自首したそうです」
「……」
「……もしもし、聞いてますか?」
「はい。聞いてます」と言ってはみたものの、安堵とほんの一瞬でも昂平を疑った後ろめたさから、上村との以降の会話はもう上の空の桃であった。
生駒芽依には三歳下の弟がいた。日頃から姉を大事にせず、女遊びやギャンブル遊びを繰り返す義兄の生駒涼に恨みを抱いていた芽依の弟が、生駒を深夜になって沢のほとりに呼び出し、改心と反省を迫ったが、間もなく口論となり、カッとなった芽依の弟が生駒を思い余って殺害してしまったというのが、事件の顛末であった。
昂平も駅に向かうタクシーの車内で流れるラジオのニュースでその事を知った。やるせない思いと、言い知れぬ苛立たしさで、胸が締め付けられる昂平であった。
【悲しみは時として、新しい哀しみを生む。
悲劇は……悲劇を繰り返す。
悲しい過去は哀しい未来を作り出してしまうのかも知れない】




