『復讐、そして、身代わり-2』
沢のほとりで見つかった死体は生駒涼だった。自殺した芽依の夫であった。警察の調べにより、生駒の死因は何か硬い鈍器のような物で殴られた事による撲殺だと断定された。凶器のその鈍器は発見されていなかった。が、直ぐに警察は一人の男を重要参考人として任意で出頭を求めた。その男は昂平であった。
警察の事情聴取の間中、昂平はほとんど喋らなかった。
ただ一言だけ、
「多摩西署の平井刑事を呼んで欲しい」と言っただけであった。
桃は秋田県警が用意した車の後部座席に座っていた。粗方の事は運転をしている男に聞いて、状況は飲み込めていた。
【秋田県警は未司馬昂平を疑っている。元恋人の生駒芽依の自殺を不憫に思って、夫の生駒涼を殺害した……復讐……元恋人を思って……】
桃は昨日の夜の事を思い出した。おぼろげな記憶ながらも昂平が午前一時過ぎに部屋を出て行くのを見ている。
桃は運転している刑事に向かって、
「被害者が殺されたのはいつ頃ですか?」
「死亡推定時刻は深夜の二時から三時の間だそうです」
【犯行は可能だ……未司馬昂平にはアリバイはない……】
昂平の取調べをしている秋田県警の桑田刑事が改めて、昂平に聞き直した。
「それは本当か?」
「……」
「間違いはないのか!?」
「はい」と昂平は頷いた。
その時、取調室のドアが開き、桃が署員などに案内されて、部屋に入ってくる。
「……」
「……」
昂平と桃はお互いを見た。お互いに気まずさが支配した。桃は桑田と簡単な挨拶などをした後、
桑田から、
「この男が言っている事は本当ですか?」と聞かれた。
「……」
「昨日はずっとあなたと一緒に居たと、そう言っているんですが……」
「……」と桃は昂平を見た。
昂平も桃への視線を逸らさず、真っ直ぐ桃を見つめた。
「どうなんです?」
「……」
「本当に一緒に居たんですか?」
「……はい」
「……」と昂平は少し俯いた。
「間違いありません」ときっぱりと桃が答えた。
「ずっと一緒にいました」と桃はそうはっきりと答えたのであった。




