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『二人きりの夜-5』
上村は一人、警察署の近くの行きつけの蕎麦屋で少し遅めの昼食をとっていた。
「多摩西署の上村刑事ですよね!?」と朋美が声をかけた。
「私はこういう者です」と上村に自分の名刺を渡し、
「相席いいですか?」と今まで自分が食べていた丼を手に聞く。
「どうぞ」と上村が了承する。
「藤田の容態はどうです?」
上村は何も答えずに食べ続けていく。
「藤田は末期のガンで、余命幾ばくもなかったという情報もありますよね!?」
上村はその質問にも答えずに食べ続けていく。
「藤田は本当に……」と朋美が言いかけたところで、上村が、
「温かいお蕎麦がのびちゃうし、冷めちゃいます。質問は食べてからにした方がいいですよ」
「……そうですね」と朋美がそばを食べていきながら、チラッと上村を見たのであった。




