『ある人の死-7』
桃は鏡に映る自分の顔を見た。
【肌が荒れているな】
でも、仕方がないと桃は思った。昨日は一睡もしていなかった。事件の重要被疑者の一人である藤田がビルの屋上から飛び降りたとの報を聞いて、慌てて病院に駆けつけてから、そのまま病院で朝を迎えた。
【どうして自殺なんて……】
藤田は奇跡的に一命を取り留めていた。だが、もう十時間以上も生死の境を彷徨っていた。手術後、救急処置室で、自殺という行動とは裏腹に、命を尚も必死に繋ぎ止めていた。
昂平も処置室の表の待合室で夜を明かしていた。目の前で人が飛び降りた衝撃。実の父親が飛び降りたという衝撃は計り知れないものがあった。昂平は未だ平静を取り戻せないでいた。
そんな昂平の元に上村が来て、一通の封書を昂平に渡した。
「どうやら遺書みたいです。今朝、これが警察署に届きました」
昂平は黙って救急処置室の方を見た。
「はい」と上村は頷いた。その遺書は藤田が書いたものであった。
「中を……」と昂平が聞いた。
「どうぞ」
昂平は封書の中から手紙を取り出し、手紙を読んでいく。
内容は十五年前に起こった未司馬家一家殺人事件の真犯人は自分であるという告白と、それの責任をとって自殺をするという事が綴られていた。
「どう思います?」と上村が聞いた。
「……」
「……」
「……ちょっと屋上に行きませんか?」と昂平が上村を誘ったのであった。
週刊ツイセキ編集部内は大騒ぎというか、てんやわんやの状態であった。
『藤田が自殺を図った』という一報を受けてからはずっとこんな状態であった。
朋美と川村は藤田が運び込まれた病院前で待機していた。
三宅は編集部でずっと、朋美などからもたらされる情報や続報を整理していた。
【藤田が自殺……情報によれば、自分が事件の真犯人だと記した遺書も見つかったらしい。どうして今頃になって……今頃になって、そんな告白をするんだ】
「ちょっと、タバコ吸ってくる」と三宅が携帯電話を手に部屋を後にしたのであった。




