『ある人の死-5』
週刊ツイセキ編集部では部内会議中であった。朋美と三宅と川村の三人が出席していた。
朋美が一人、立ち、ホワイトボードを用いて、
「未司馬家一家殺人事件が、顔見知りの犯行であると推察すると、自ずと容疑者は絞られる事になります」とホワイトボードに貼られた未司馬昂平の写真(や名前)などを指し、
「警察も最重要人物と見ている未司馬昂平」
「そして……」とホワイトボードに貼られた未司馬護の写真(や名前)などを指し、
「未司馬家の当主である未司馬勝の弟で、未司馬昂平の後見人でもある弁護士の未司馬護」
ホワイトボードに貼られた藤田哲平の写真(や名前)などを指し、
「最後に未司馬昂平の実の父親であり、未司馬眞由美の元夫である藤田哲平」
ホワイトボードに貼られた、
未司馬昂平の顔写真。
未司馬護の顔写真。
藤田哲平の顔写真。
「この三人が有力な容疑者となるはずです」と朋美がった。
「他にも親戚とか友人とかは?」と川村が質問する。
「可能性は否定しきれないけど、今までの調査や警察の動き、極秘情報や関係者情報などを整理すると、この三人に絞っていいと思う」と三宅が答えた。
上村の運転する車が赤信号で停まった。辺りはもう暗く、夜になろうとしていた。
助手席に座る桃が、
「上村さん……」と声をかける。
上村がチラッと桃を見るが、信号が青に変わり、車を発進させる。
桃が、
「今日、会いに行った二人」
「……」
「あの二人も容疑者として考えているんですか?」
「どんな小さな可能性も捨てちゃいけません」
「はい」
「今日、会いに行った二人と未司馬昂平。この三人の中に……」
「……はい」
「それが自分が十四年と十一ヶ月、捜査してきた上での結論です」
「……」と桃は上村が容疑者として挙げた三人の男の事をもう一度、思い返していた。
【未司馬昂平……
未司馬護……
藤田哲平……
この三人の中に犯人がいる。
……事件の全ての真相を知る犯人がいる】
週刊ツイセキ編集部では尚も部内会議が続いていて、朋美と三宅と川村の三人が、
「未司馬昂平はともかく、他の二人は薄くないですか? 藤田は何となく想像出来なくもないけど……」と川村が言った。
「復縁」と朋美が言った。
「あり得る」と川村が相槌を打った。
「元妻の未司馬眞由美に復縁を迫った上で、それを断られた事により逆上し、一家殺害。動機としては申し分ない」と三宅が言った。
「そう考えると未司馬護の動機って、何なんでしょう?」と朋美がふとした疑問を口にした。
「全く分からない」と三宅が首を捻った。
「調べても、それらしい事実は全く出てこないですし」と朋美が言えば、
「じゃあ、容疑者から外していいんじゃないですか」と川村が言った。
「だが、警察が依然として未司馬護をマークしているというのも事実だ」
「未司馬昂平の後見人だからという側面もあるとは思うけど」
「確かに」
「でも、未司馬眞由美の殺され方を考えると、犯人は眞由美とはよっぽどの関係だったと思うなあ。明らかに逡巡が見てとれるし」と川村が言った。
「ああ」と三宅が深く頷いた。
「そう考えるとやっぱり……」と朋美が見た方向と、三宅と川村が見た方向は全く一緒だった。
三人が見つめたものは……ホワイトボードに貼られた未司馬昂平の顔写真であった。




