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『正月の出来事-8』
昂平は年が明けて、漸く本格的に仕事探しを始めていた。が、やっぱり不況のせいか、募集自体もめっきりと少なくなっていたし、なかなかこれというような求人を見つけるのに苦労していた。
昂平は自分の部屋の押入れの中を思い出した。中には恐らく五千万円位の金はある。暫くはあせらなくても困るような事はないはずだ。が、昂平はその金を、その金だけは当てにするのはやめようと思っていた。あの金はそういう自分の自堕落の為に使っていい金ではなかった。そういう金ではない。昂平はこの際、定職に拘らなくていいと思った。日雇いでもアルバイトでもいい。あの押入れの中の金に頼らなくてもいいように、きちんとまずは働かなくてはいけないと昂平は考えていた。
昂平は仕事探しからの帰宅の道すがら、一軒のラーメン屋の従業員募集の貼り紙を見つけた。本当の事を言えばあまり気が進む仕事ではない。やりたい仕事ではなかったが、今はそんな事を言っている場合じゃない。すぐにでも何かを始めないといけないとそう考えた昂平はそのラーメン屋の暖簾を潜り、従業員募集の求人に応募したのであった。




