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『正月の出来事-4』
上村は亡くなった妻の遺影と差し向かいに一人、家で酒を飲んでいた。豪邸と呼べる程でもないし、やっとの思いで購入した建て売り住宅ではあったが、今となっては、やっぱり一人で暮らすにはあまりにも広過ぎるので、何度かこの家を売り払って、近くに小さなアパートでも借りようかと思った事もあったが、この家で暮らしてきた数々の家族との楽しく懐かしい思い出を思い出すたび、この家を売り払おうなんて思いはいつもどこかに吹き飛んでしまうのであった。
【人間はいつも自己中心的で身勝手な生き物だ。どこか他人事のように言ってはいるが、自分が正しくそうだ。今まで自分の好き勝手な事ばかりしてきて、いざ、自分が寂しく、孤独を感じた時、慌てて誰かの温もりを求めようとしたって、誰も手を差し伸べてくれたりはしない。そこで初めて気が付くといい。自分の身勝手さを思い知るがいい……すまない。本当にすまない】
上村は亡くなった妻の遺影を見ながら、また酒を煽ったのであった。




