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『正月の出来事』
『正月の出来事』
桃は人でごった返す神社に新年の参拝に来ていた。参拝客が多過ぎて、神社の境内に行くのに、入場規制をしていた。
昔は近所の神社に年が明けるとすぐ夜中のうちに家族と参拝に来ていた。今年は一人きりで初詣に来ていたのだった。
桃は入場規制の敷かれている人波に揉まれながら、一軒の店に目をやった。そこは甘酒を売るお店だった。
桃はまた昔の事を思い出していた。家族で一杯の甘酒を回し飲みした事。父や母がフーフーして甘酒の温度を適温にしてくれ、ちょうど飲み頃になったはずの甘酒はあまり美味しいとは思わなかったが、体がとてもぽかぽかして温かくなったのはよく憶えている。それは甘酒の温かさだけではなく、家族の優しい温もりが、桃の体を温めたのかも知れない。
【帰りに久しぶりに飲んでみようか……一人で飲めるかな】
桃は寒さに少し身をすくめながら、そんな事を思っていた。




