『クリスマスプレゼント-5』
桃はファーストフード店で一気に週刊ツイセキの未司馬家一家殺人事件に関する記事を読んだ。
文中はオブラートに包んであるかのようであったが、明らかにある一人を渦中に絞るかのような内容だった。
『昂平犯人説』……記事の主題は明らかにそこであった。桃の思いとリンクするかのような内容であった。
【誰が犯人?
……あなたですか?
事実が知りたい……それだけ……きっと、それだけ】
昂平は安らぎに近いような心地であった。愛美と話していると、今日あった事、今まであった事が一気に忘れらるような気持ちになった。
それと同時にもう一つ、気が付く事もあった。やっぱり目の前にいる愛美は母親の眞由美ではないという事実。二人は顔が似ているという事以外は全くといってリンクするところはなかった。愛美はがさつで上品さのかけらもない。それでも昂平は構わないと思った。逆に顔以外で似ているところがあったとするならば、それはそれで戸惑ってしまう。違うからこそいいんだと昂平は思っていた。
クリスマスを意識した華やかな店内の雰囲気がより一層、昂平の負の部分を払拭してくれるかのようであった。
昂平がスナック『M』でひと時の楽しい時間を過ごし、店を出たその時、桃と会った。
二人共を気まずさが支配した。
昂平の気まずさ……愛美と会っていたという事を知られたという事実。それを桃に知られたという事実。そして……やっぱり桃がマッチの張本人だったという事実。
桃の気まずさ……自分がスナック『M』を、愛美を知っているという事を昂平に知られたという事実。
お互いの気まずさが心を支配していた。それでも、昂平がまず口を開いた。
「やっぱり……」と昂平には珍しく、桃を真っ直ぐに見つめて言った。
「……」
「サンタクロースや、クリスマスプレゼントのつもりだった?」
「違う」
「おかしいなら笑っていい」
「違う」
「……」と昂平は哀しというか切ないというか、何とも言えない表情をしたまま、その場を去っていく。
二人を隔てた距離がどこまでも、どこまでも離れていくかのように。
そんな二人を覆い隠す……街では煌びやかな照明やネオンの明かり、とても陽気な音楽に包まれていた。とても印象的なコントラストがとてつもなく哀しみを浮き彫りするかのようであった。




