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『封印が解かれる時-2』
年の瀬、十二月。暖冬、暖冬とマスコミが言ってはいるが、「やっぱり寒い」と上村充広は首をすくめた。
上村は墓地にいた。この墓地には月に一度は焼香に訪れていた。毎月、日にして十四日。
上村は『今日は赤穂浪士の討ち入りの日だ』と時代劇好きなというか、とりわけ忠臣蔵が大好きな、ごくごく平凡な年配の親父という出で立ちであった。
上村の視線の先に、ある墓石に手を合わせる一人の男がいた。上村もその男が手を合わせる墓石を目指していた。
未司馬護が合掌していた。護は誰かが来る気配を察して、その方を見た。その方には上村がいた。
護は上村に向かい、目礼をした。護が焼香していたのは『未司馬家』の墓であった。