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『封印が解かれる時』
『封印が解かれる時』
そこは雑然としていた。整理整頓とはほど遠い職場風景だった。
江波出版社。出版社としては中堅クラス。
その中の週刊ツイセキ編集部。
ゴシップにお色気、それが二枚看板と言いきれる、所謂、ややもすると世間に低俗と評価されながらも、かといって、部数はそこそこという、そんな雑誌だった。
編集員の榎本朋美が封書の封をハサミで切っていく。宛名は編集部宛で、差出人の名前はなかった。朋美は躊躇いもなく封書の封を開封し、中の手紙を読んでいく。同じような手紙や投書が毎日のように届くので、今回もそれの類だと思っていた。
「……!」と手紙を読んでいた朋美が、
「編集長」と読んでいた手紙を手に立ち上がり、三宅一生のデスクへと向かう。
「これ」と朋美が三宅に読んでいた手紙を見せた。
「知ってますか?」と朋美が聞くが、
「……」と答えず、三宅は手紙を尚も読み進めていくのであった。