表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スウィートビター  作者: そらあお
35/152

『忘れられぬ人』

『忘れられぬ人』



 昂平は桃と別れた後も家に帰る気にはなれず、夜の繁華街をさまよっていた。街はクリスマスの装いで華やいでいた。行き交う人々の孤独や寂しさを、この期間だけは精一杯覆い隠すようにきらびやかに街は彩り、活気に溢れていた。


 昂平はそんな大通りからは少し外れた一軒のスナックの扉を叩いた。店の名は『M』といった。扉を開けると、大方イメージ通りのカウンターにテーブル席が三つある程度のこじんまりとしたどこにでもあるようなスナックだった。


「いらっしゃいませ」と明らかに店のママだと推測可能な年配のふくよかな女が愛想良く昂平を迎えた。

他に二十代後半位……女性は化粧をすれば、限りなく年齢の判別は難しくなるし、頃合いよく照明がしぼられた店内では、多少の誤差もあるだろうが、その二十代後半位に見える女がテーブル席で先客の相手をしていた。


「好きな所に座って」と店のママがカウンター席を指し、カウンターの中に入っていく。


「生、ありますか?」と昂平がカウンター席に座り、注文する。

「もちろん。寒くても、まずはやっぱり生よね」と生ビールの準備をしながら、ニコッと笑う。嫌味じゃない笑い。人柄がすぐに分かる優しい笑い。


「はい、お待ちどうさま」とビールと、お通しを合わせて出す。


昂平がビールに口をつける。が、あまり美味そうには飲まない。テレビCMだったら明らかにNGな飲み方だ。


「お客さん、お名前は?」とママが話のきっかけ作りに聞いてくる。


「……昂平です」


未司馬とは答えない。昂平はこういう席では大体、下の名前を答えるようにしていた。


「こうへいさん」


「はい」


「私は美弥子ミヤコ。これ名刺」と昂平に名刺を差し出す。


「すいません……(自分は名刺を)持ってなくて」


「いいの、いいの。私のだけ受け取ってくれたら」


「……すいません」とまた昂平はビールを口につける程度飲んだ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ