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『M-8』
十五年前の二月十四日の夜。外は雪がちらついていた。夜半から朝にかけて大雪になる、そんな天気予報が出ていた夜であった。
坂西家では長男の坂西将一郎がカーテンの隙間から外を見た。それは将一郎が、雪が降っているかなとか、そんな確認の為に外を見た訳ではなかった。
「……」
家の前の道を足早に歩いていく昂平の後ろ姿。
その頃、坂西家のお風呂場の脱衣所では、父親の坂西紀一が浴室の中に向かい、
「昂平くん、シャンプー、切れてない?」と声をかける。が、浴室の中からは応答がなく、心配になった紀一が、
「……昂平くん、開けるよ」と浴室の扉を開ける。
が、昂平の姿はそこにはなかったのであった。
未司馬家では桃が昂平に向かい、拳銃を向けていて、
「坂西家の家族は、いきなり両親と妹弟をいっぺんに失ってしまった長男の親友の将来を慮って、泊まりに来ていた長男の親友は事件当日の夜、外出する事はなかったと嘘の証言をした」
「……」
「……あなたは」
「……」
「しめしめと思ったに違いない」
「……」
「悪魔の心が……」
「……」
「魂が……」
「……」
「そして……」と言ったまま、桃は言葉を飲み込んだかのように押し黙った。
そして、桃はある光景を想像してみた。




