『M-5』
玄関のドアが開き、拳銃を手にした桃が入ってくる。
「……」
桃は音を立てないように、ゆっくりと家の中に入っていくのであった。
昂平が屋根裏部屋へと続く収納式の階段を上がっていく。
昂平が屋根裏部屋の明かりを点けた。そこは広さにして四畳半もないほどの、狭くて、天井の低い部屋だった。昔は全然気にならなかったのに、昂平は改めて天井がこんなにも低い事に気がつくのであった。
昂平に懐かしい記憶が甦ってきた。この家は母親の眞由美の再婚相手の未司馬勝が建てた家であったが、設計や建築指示は眞由美が行っていた。この屋根裏部屋も実は眞由美が勝に内緒で設計した部屋だった。当時四歳だった昂平の手を連れ、眞由美が、
「昂平、この部屋はママと昂平だけが知ってる内緒の部屋だよ」と言ってくれたのを昂平は今でもはっきりと憶えていた。
それでも同じ家に暮らせば、直ぐに勝にもこの部屋の存在は知られるようになった。それでも、眞由美が、
「昂平……あの小さな扉の奥に、もう一つ、小さな扉があるの。あれがママの内緒の宝箱」
と言っていた事もはっきりと憶えていた。
が、その後、勝が、
「子供がこの部屋に出入りするのは危ないから」と昂平には一切、この屋根裏部屋に入る事も近付く事さえ禁止してしまった為、以後、昂平はこの部屋に全く踏み入る事はなかったのだった。
昂平が幼い頃に母親の眞由美に教えられた小さな扉が目の前にあった。
【この扉の奥に……】
昂平がゆっくりとその小さな扉に近付いていく。
「……」
昂平がその小さい扉を開ける。昂平がその扉の中に入っていた物を全て取り出し、中を空っぽにする。
「……」
その中に、確かに覗き込むように注意して見ないと分からない位の小さな隠し扉が確かにあった。
【これだ】
昂平がその小さな隠し扉の中に手を伸ばす。
【何かある……】
昂平がその小さな隠し扉の中に入っていた物を取り出す。物は袋に包まれていて、
「……」
昂平は袋の中を見てみた。袋の中には昂平の通知表や賞状、昂平が幼い頃に描いた拙い眞由美の似顔絵などが出てくる。
「……」
それらと共に袋の中には……一通の手紙が入っていた。手紙の封は既に開いていて、封書の裏には『MからMへ』と書かれてあった。
「……」
昂平が封筒の中から手紙を取り出したのであった。




