『家族の温もり-8』
桃はその頃、また、昔、家族で来ていたラーメン屋の行列に並んでいた。昼間だからか、それとも少し昼のピークを過ぎていたからなのか、数人ほどしか並んでいなかった。
桃は心がかじかむような時、挫けそうな時、切なくてどうしようもない時、あきらめそうになる時……気がつけばこのラーメン屋に来ているような気がした。一杯のラーメンが心も体も温めてくれる。折れそうになった心を勇気付けてくれる。
その時、桃はふと思った。
【ラーメンじゃないんだ……家族の温もり……それが私を勇気付けてくれるんだ……熱いだろうって、お椀に取り分けてくれた父親。自分も好きなのに私が大好物だからってチャーシューやゆで卵をを分けてくれた母親。チャーハンとか余計なものを頼みすぎて、いつも決まってちょっと残してしまい、食べきれない私に向かって、『もったいねえなあ』って、スープまで飲み干してくれた兄。その皆が私を支えてくれ、励ましてくれ、勇気付けてくれる。
坂西紀一……愛してます
坂西李果……愛してます
坂西将一郎……愛してます
みんな……みんな……大好きだった……大好きだった
パパ……最近はね、熱いのもだいぶ平気になったよ
ママ……チャーシューは私も好物だから……一緒にチャーシューメンを食べようね
お兄ちゃん……頑張って残さず全部食べるから。もしも……もしも、また食べられなかったら、やっぱり食べてくれる?】
桃の瞳からは涙が溢れて止まらなかった。桃は誰にもそれを、泣いているのを悟られないようにマスクをした。
【泣いてられない……覚悟は決まった。真実を突き止めなくちゃいけない。絶対に……】
と、桃は涙をこれまた誰にも悟られないように拭ったのであった。




