『家族の温もり-7』
朋美が社内の喫煙室で暫くの間、止めていたタバコに火を点けた。火は点けたが、やっぱり吸おうか、止めようか迷った。
【桃ちゃんが事件の関係者だった……うん? ……待って】
朋美は躊躇なくタバコを吸った。久しぶりのニコチンはクラクラする。が、それ以上にやっぱり美味いと感じた。と、同時に朋美はある言葉、桃とのある会話を思い返していた。
『偶然通りかかったお兄ちゃんの友達が……冬の寒い川に……寒さなんて気にせず、結構汚いって有名な川だったんですけど……川に飛び込んで、流されそうになったこのスケート靴を拾ってくれたんです』
『ダメだよって、いつもはめったに笑わないのに、その時だけはにこって笑ってくれたんです』
『……もしかして、その人が初恋』
『はい』
『私……その人に、バレンタインデーに思い切って、チョコレートをあげたんです』
『厳密にはお兄ちゃんに渡して貰ったんですけど』
『恥ずかしかった?』
『……それもあるけど、さっき言ってた……交通事故に、バレンタインデーの一週間前に遭っちゃって、バレンタインデーの日は入院してたんです。手作りのチョコも作れなくて……』
『そういう事かあ……で、どうだったの?』
『……』
『ダメだった!?』
『……恐らく』
『恐らく?』
『その人、私が退院する頃……もう三月になる頃には引っ越しちゃったんです』
【未司馬昂平が……桃ちゃんの……初恋の人……嘘!? ……どういう事?】
「こうしてらんない」と朋美が吸っていたタバコの火を揉み消し、慌てて喫煙室を出て行くのであった。




