『家族の温もり-3』
翌朝、謹慎が明けた上村が久しぶりに多摩西署に出勤した。いつもの刑事課ではなく、装備課であった。
そこは警察の備品管理やパトカーの配備、拳銃などの管理をするセクションであった。
「色々と不慣れな事も多いかと思いますが、何卒、宜しくお願いします」と上村が課員などに向かい、謙虚に挨拶をする。
「ちょっと署長にも挨拶してきます」と上村はそう言って、その部屋を出て行くのであった。
署長室では署長の元田と刑事課課長の石井が二人きりで話をしていた。
「藤田哲平が犯人なのか?」と元田が言った。
「まだ何とも」と石井が言いかけたところで、元田がそれを制するように、
「いい。それ以上は言わなくていい」
「……はい」
「対面は保たれた」
「……」
「最悪のシナリオは消え去った」
「……」
「このまま、もしも、二月十四日が過ぎて、十五年が経過し、それでも、まだ事件解決の糸口が見えなかったとしても……」
「……」
「こちらにはジョーカーがある」
「……」
「藤田を……」
「はい」
「最悪、藤田を被疑者死亡のまま、起訴すればいい」
「……はい」
「こちらには遺書がある」
「はい」
「間違いなく戦える」
「はい」
その二人の会話、元田と石井の会話に聞き耳を立てている人物がいた。その人物は上村であった。
「……」
上村は硬く拳を握り締めるのであった。




