『悲しみバレンタイン-10』
スナック『M』ではママの美弥子が昂平に向かい、
「ごめんなさい」と頭を下げ、
「あのコインロッカーは私もよく使うから」と言った。
「……」
「愛美から見せて貰った鍵を見て、直ぐにそこの駅のロッカーだって、ピンときたわ」
「……」
「そんなこんなしてるうちに、藤田さんがあういう事になって、愛美も……」
「……」
「ロッカーって、ある一定期間が過ぎて、入金がされないままだと、強制的に物が出されちゃうのを知ってたから……」
「……」
「直ぐにロッカーを管理している会社に問い合わせたわ」
「……すいません」
「ごめんなさい。中は見るつもりがなかった」
「……」
「でも確認が必要だからって、中を見せられて……ごめんなさいね」と美弥子が袋を取り出し、昂平に渡す。
「ありがとうございます」
「……ごめんね」
「……中って……」
「……見たら?」と美弥子が促すも、昂平は袋の中を見ようとせず、
「中って、何が入ってましたか?」と昂平が聞く。
「……カセットテープとアルバム」
「……」
「あと……生命保険の証書と……」
「……」
「……手紙。お父さんからの手紙」
「……」
「手紙は読んでないから。絶対に読んでない」
「大丈夫です」
「ごめんなさい。また涙が出てきた」と美弥子が涙を拭い、
「大切にしてあげて」
「……」
「お父さんの思いや愛情が一杯詰まってる」
「……」と昂平は俯き、と同時に否応にも目に入る袋を見て、複雑な思いに駆られる昂平であった。
「もう直ぐ、バレンタインでしょ!?」
「……」
「良かったら、これ食べて」と美弥子が小さな包み、チョコレートを昂平に渡す。
「……ありがとうございました」と昂平は目を閉じ、深々と美弥子に頭を下げるのであった。




